2004 Fiscal Year Annual Research Report
DNAポリメラーゼ阻害物質の化学的研究とその作用機構の解明
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03J01275
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
紙透 伸治 東京理科大学, 理工学研究科応用生物科学専攻, 特別研究員(DC2)
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Keywords | DNAポリメラーゼα / 酵素阻害剤 / デヒドロアルテヌシン / 全合成 / 互変異性体 |
Research Abstract |
デヒドロアルテヌシンは哺乳動物のDNAポリメラーゼ(pol)αのみを特異的に阻害し、その他のpolβ、δ、εなどは阻害しない。このため、この化合物はpolαの機能を詳細に調べるための鍵物質となることが期待されている。また、本物質は、ヒト胃がん細胞の増殖を抑制することから、抗がん剤としても期待されている。しかしながら、デヒドロアルテヌシン生産菌の生産量は不安定であり、安定した供給は望めない。さらにこの化合物の全合成は未だ報告がない。そこでデヒドロアルテヌシンを全合成することにした。市販のトリヒドロキシ安息香酸から3工程で目的とするアリールトリフラートを合成した。このアリールトリフラートとアリールボロン酸あるいはアリールボロン酸エステルとを鈴木カップリングさせ、脱保護、酸化を経て、二つの経路でデヒドロアルテヌシンを合成した。総収率は、7工程23%、あるいは6工程21%であった。現在、共同研究者によってデヒドロアルテヌシンの抗腫瘍活性試験を行っている。 デヒドロアルテヌシンは、X線結晶解析によりδラクトン環を有する構造であることがRogersらによって既に報告されている。本研究で、極性溶媒(ジメチルスルホキシド、メタノール、水)中では、γラクトン環を有する互変異性体との平衡状態であることを明らかにした。 構造活性相関について調べるために、デヒドロアルテヌシンをアセチル化した。それぞれのアセチル体のDNAポリメラーゼ阻害活性を測定したところ、これらの誘導体は全て阻害活性がデヒドロアルテヌシンと比較して20倍程度弱くなっていることが判明した。これらの結果から、デヒドロアルテヌシンの片方のヒドロキシル基ならびにエノン構造が阻害活性に重要であることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)