2004 Fiscal Year Annual Research Report
「育児放棄」の社会学的調査-新たな<母>アイデンティティの構築という観点から-
Project/Area Number |
03J01339
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
倉島 泰子 (村田 泰子) 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 家族 / 育児 / 実践 / 児童虐待 / 育児放棄 / ネグレクト / 高齢者 / 地域 |
Research Abstract |
研究課題「「育児放棄」の社会学的調査」について、本年度は、フィールド調査と文献調査を行った。 フィールド調査は、(社)京都市シルバー人材センターの女性会員が運営する、京都市内の認可外託児施設「ばぁばサービスピノキオ」を拠点に行った。この施設は、新エンゼルプランで示された「在宅児も含めた多様な育児支援の推進」という指針に基づき、02年度より専業主婦層・パートタイム労働者層の母子を対象として、一時保育のサービスを提供している施設である。研究者は03年4月より週1-2回のペースで継続的に施設を訪れ、参与観察を行ってきた。加えて本年度は、保育スタッフ22名を対象としたアンケート・インタビュー調査を実施した。調査では、対象の世代的・地域的・ジェンダー的特徴に注目し、下記のことを明らかにした。成果は2本の論文にまとめ発表した。 現在、「ピノキオ」で保育に当たる女性の95%は、昭和一桁から10年代生まれ、人口学的にみた「移行期世代」に属している。一方で、結婚年齢の画一性や産児数の少なさ(平均2.2人)、離婚の少なさなどのデータからは、これらの女性が近代家族的な価値観を内面化していたことがわかる。他方、夫の職業特性(京都市中京・上京区の地域特性も手伝って、染め・織りなどの自営が50%)や義父母との同居・隣居率の高さなどのデータからは、彼女たちがむしろ前近代的な女性労働の形態に近いかたちで仕事と子育てを両立させてきたことがわかる。家父長制下の女性特有の苦労も多い。まとめとして、一見したところ現代社会における「親密圏の危機」を埋め合わせるために古いタイプの「親密圏」を再構築する試みのように映るこの実践は、実際には伝統から近代への過渡期の女性たちの経験によって支えられた実践と言うことができる。 さらに、本年度は県外の同種の託児施設を4ヶ所調査に訪れた。また、関連文献の調査も合わせて実施した。
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Research Products
(3 results)