2003 Fiscal Year Annual Research Report
「育児放棄」の社会学的調査―新たな<母>アイデンティティの構築という観点から―
Project/Area Number |
03J01339
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
倉島 泰子 (村田 泰子) 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 家族 / 育児 / 実践 / 育児支援 / 虐待 / ネグレクト / 育児放棄 / ジェンダー |
Research Abstract |
研究課題「「育児放棄」の社会学的調査」について、本年度は、行政および民間の諸団体が提供する多様な育児支援の利用状況についての調査を実施した。中心となるのは、(社)京都市シルバー人材センターの会員が運営する子ども一時保育施設での約1年間にわたる現場調査である。調査は、週2回の参与観察と、スタッフ及び施設利用者を対象としたアンケート調査・聞き取り調査からなる。参与観察にはデジタルカメラを使用し、聞き取り調査にはデジタルボイスレコーダーを使用した。また、データの取りまとめにはパソコンを使用し、後輩に作業補助をお願いした。このほか、京都府下の複数の託児施設や保健所等も訪れ、聞き取り調査を実施した。 また、上記フィールドワークと並行して、関連文献の調査を行った。大阪大学図書館や国立国会図書館、(社)子どもの虐待防止センターを訪れ、関連文献や資料の収集・コピーを行った。 本年度の研究からは、90年代末以降、児童虐待への対処の一環として行政主導で進められてきた多様な育児支援の試みについて、次の三点が明らかになった。第一に、利用者を働く女性に限定しない(言い換えれば専業主婦層の女性のための)保育サービスが現在各地に広がっている。しかし、第二に、利用には一定の困難が伴いもする。とくに専業主婦層の女性が「リフレッシュ」目的で利用しようとする場合、その行為はしばしば児童虐待の下位カテゴリーである「育児放棄」と重ねられ、非難されてきた。インタビューでも、多くの女性が家族から利用を反対されたり、自分自身、子どもを預けることに対し、根強い不安や罪悪感を抱いていることが判明した。しかし、第三に、これらの女性は家族・自己を説得するための多様な戦略を用いてたくましく利用をつづけている。これらの女性の実践には、国家から与えられた支援を「使い返す」ような、独自の創造性を読み取ることができる。
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Research Products
(2 results)