2005 Fiscal Year Annual Research Report
「育児放棄」の社会学的調査-新たな<母>アイデンティティの構築という観点から-
Project/Area Number |
03J01339
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
倉島 泰子 (村田 泰子) 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 育児 / 育児放棄 / ネグレクト / 児童虐待 / 家族 / ジェンダー / 母性 / 実践 |
Research Abstract |
本年度は、1年目以降継続的に調査を行ってきた、(社)京都市シルバー人材センターの女性会員が自主的に運営する『子ども一時預かり施設 ばあばサービスピノキオ』でのフィールドワーク、およびこの施設の利用者・保育者を対象に実施したアンケート・インタビュー調査で得られたデータの取りまとめを完了させた。 また、上記託児施設での事例をより広い社会的文脈に位置づけて理解するために、行政によって認可された託児施設(いわゆる保育所)、ならびに県内外の同種高齢者団体やNPO諸団体による子育て支援の取り組みのフィールドワークもあわせて行った。 さらに、研究の最終年度となる今年度は、海外の研究者とも積極的に交流を行い、上記事例研究をもとに、母性の社会学的研究の新しい理論的枠組みを構築することをこころみた。具体的に、2005年6月には韓国梨花女子大学を、2006年1月から3月にかけては英国マンチェスター大学を訪問し、母性ならびに虐待・ネグレクトについての先駆的研究を行っている研究者らと意見交換を行うなどした。最終的に、研究者は、80年代以降日本のフェミニズムが依拠してきた母性研究の枠組みを、江原や船橋の整理に依拠しつつ、「母性主義イデオロギーの批判」、「<子殺しの母性>研究」、「現実の母性状情況の研究」として批判的に整理し、それらの限界を乗り越えるための視座として、「実践における母性」という視座を提起した。 研究成果は、2005年10月には、日本社会学会第78回大会にて報告したほか、2本の研究論文にまとめ、それぞれ編著の一部として発表した。さらに今年度中には、成果を博士学位論文としてまとめる予定である。
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Research Products
(2 results)