Research Abstract |
Nd-Fe-B磁石の優れた磁気特性は,Nd_2Fe_<14>B金属間化合物に由来するが,この相は液相と初晶Fe相から包晶反応によって生成するため,通常の溶解凝固においては,しばしば初晶Fe相が残存する.この初晶Fe相は,室温でソフト磁性相へと変態するため,Nd-Fe-B磁石のハード磁気特性を低下させてしまう問題がある.したがって,この磁石を高性能化するためには,初晶Fe相を含まないNd-Fe-B合金を作製することが非常に重要である.そこで本研究では,無容器プロセスを利用した過冷凝固法を利用してNd-Fe-B合金を作製し,初晶Fe相を全く含まないNd-Fe-B合金の作製を試みた. その結果,Nd-Fe-B合金を過冷凝固させると,Nd_2Fe_<14>B相ではなく,これまでに報告されていない新しい準安定相が生成することを発見した.この準安定相の結晶構造は菱面体で,Nd:Feの割合は,2:17であった.また,この準安定相は,初晶Fe相と液相から包晶反応によって生成し,その後Nd_2Fe_<14>B相に包晶変態することを明らかにした. 試料サイズが1mm程度と比較的大きい場合には,この準安定相が非常に微細なNd2Fe14B相へと固相分解し,この現象を利用することで,凝固による高性能磁石の直接製造の可能性を示した. さらにこの準安定相について磁気特性を調べた結果,これがソフト磁性相であるため,Nd-Fe-B合金の高性能化のためには,除去する必要があることを明らかにした.
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