2004 Fiscal Year Annual Research Report
秦漢時代から六朝時代にかけての官僚機構運営の諸側面とその変遷
Project/Area Number |
03J01434
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
米田 健志 大谷大学, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中朝 / 内朝 / 前漢 / 尚書 / 侍中 / 給事中 / 禁中 |
Research Abstract |
本年度は、魏晋南北朝時代における政府の中枢機関である尚書・中書・門下の三省に関連して、その起源である前漢後半期の中朝について研究を行った。その概要は以下のとおりである。 前漢中期の昭帝時代に中朝が出現し、それ以前から存在していた尚書とともに、中央政府における重要性を増し、さらに時を経て唐代に至り政府の中枢たる三省へと成長してゆく萌芽となったことは、すでに周知の事実である。しかし、従来の研究では、中朝をめぐる政治史的な側面、もしくは中朝と外朝との政治的関係といった視点からの分析がなされるのみであった。その結果、中朝を構成する個々の官職がいかなる職掌・機能を有していたのか、中朝とは宮中のどのような場所であったのか、尚書と中朝官は皇帝の政務遂行にどのように関っていたのか、という点についてはほとんど明らかにはされていない。筆者はそうした反省に立って、中朝を制度的な側面から考察した結果、次のような事柄を明らかにした。 ・前漢において、多様な職掌を有していた中朝官の共通性は、宮中における皇帝の私的空間たる禁中への出入りを許されていたことである。また、皇帝の書記である尚書も禁中において職務を遂行する。 ・同時に禁中は、皇帝が政務を執る場所でもあり、これは一般の官衙における便坐に相当する。 ・皇帝が尚書によって取り次がれた上奏文を決裁するにあたっては、皇帝による判断の参考に供するために、給事中・諸吏などによる「平尚書奏事」すなわち評議が行われる。 ・禁中での政務遂行においては、口頭での意思伝達が大きな比重を占めており、この点で侍中・中常侍は皇帝に多大な影響力を有していた。 ・また侍中・中常侍は、非公式の径路によって上奏文を皇帝に取り次ぎ、これによって政策決定の迅速性をもたらした。 ・以上のような機能を有する中朝官とは、いわば皇帝と尚書を取りまく官房を形成していた。
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Research Products
(3 results)