2003 Fiscal Year Annual Research Report
パーキンソン病モデルを用いて大脳皮質-大脳基底核ループの運動制御機構を解明する
Project/Area Number |
03J01463
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
金田 勝幸 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 大脳基底核 / パーキンソン病 / 淡蒼球 / 代謝調節型グルタミン酸受容体 / トーパミンニューロン / 運動制御機構 / 電気生理学 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
黒質ドーパミンニューロンの変性・脱落に伴い発症するパーキンソン病の運動症状発現には「皮質-基底核ループ」の機能異常が深く関与していると考えられる。筆者はこれまで、パーキンソン病の病態生理を明らかにする目的で、パーキンソン病モデルサルの大脳基底核を電気生理学的に解析してきた結果、皮質刺激に対する淡蒼球内節ニューロンの活動に顕著な変化を見出した。具体的には興奮-抑制-興奮からなる3相性応答のうちの抑制がパーキンソン病モデルにおいては減弱あるいは消失していた。そこで本年度は、この様な活動変化がドーパミン神経伝達の修飾や視床下核の機能ブロックにより受ける影響を詳細に解析した。その結果、Lドーパの全身投与により皮質刺激に対する応答が正常化するとともに無動が改善すること、さらに、視床下核の活動をムシモルの微量注入によりブロックすると、皮質刺激に対する興奮が消失し、抑制が増大するとともに無動が改善することが明らかとなった。以上の知見は、淡蒼球内節の抑制の減弱が、視床・大脳皮質の脱抑制を不十分にし、結果的に無動につながるという可能性を示している。 近年の研究から代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluRs)が基底核において特異的な発現分布を示すこと、さらに、パーキンソン病の発症過程において視床下核由来のグルタミン酸神経伝達の亢進が注目されていることから、この様なグルタミン酸神経伝達亢進が基底核でのmGluRsの発現にどのような影響を与えるかを解析した。8つのmGluRsサブタイプの中でもmGluR1aはその広範な発現分布から機能的重要性が示唆されている。そこでまず、mGluR1aの黒質ドーパミンニューロンでの発現を健常なサルとパーキンソン病モデルサルを用いて免疫組織化学的に比較検討した結果、黒質背外側部に多く存在するcalbindin-D28K(CD28K)陽性ドーパミンニューロンでは腹側部に分布するCD28K陰性ドーパミンニューロンよりもmGluR1aの発現が弱いことが明らかとなった。さらに、CD28K陽性ドーパミンニューロンはパーキンソン病モデルサルにおいても比較的保存されていることから、このような黒質内でのmGluR1aの発現分布の違いが、ドーパミンニューロンの脱落に部分的に寄与している可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)