2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01490
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
池田 敦 国立極地研究所, 研究教育系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 岩石氷河 / 永久凍土 / 岩壁 / 地温 / ブルックス山脈 / アラスカ山脈 / スイスアルプス |
Research Abstract |
岩石氷河の発達に岩屑供給条件と温度条件がどのように寄与するか明らかにするために,高緯度の岩石氷河を中心に中緯度の岩石氷河も比較対象とした研究を行った。より高緯度ほど岩石氷河内の永久凍土が低温で,温度条件よりも岩屑供給条件が岩石氷河の挙動を支配するという仮説の検証が目的である。今年度は主にブルックス山脈(北極圏内)・アラスカ山脈・スイスアルプスの温度条件データを収集,比較し,また,電気探査・地震波探査温を実施した。各地域ごとに岩壁規模と岩石氷河規模には正の相関関係が見られ,高緯度・中緯度を問わず,岩石氷河の発達は岩屑供給量の多寡の影響を受けると考えられた。スイスアルプスやアラスカ山脈では,流動している岩石氷河(活動型)が相対的に低温な位置にあり,流動していないもの(停滞型)と活動型の分布域が標高・斜面方位で分かれるのに対し,北極圏では流動の有無がそのような温度条件に対応していなかった。停滞型の年平均地表面温度で比べると,アルプスとアラスカ山脈では融点かそれをわずかに上回るのに対し,ブルックス山脈では融点を大きく下回っていた。これらの結果から,不連続永久凍土帯(アルプス等)では永久凍土の融解による厚みの減少が岩石氷河停滞化の主要因であるのに対し,連続永久凍土帯(北極圏)では岩石氷河の前進を補填するだけの岩屑供給がなくなった場所から停滞化していると考えられた。また物理探査の結果、アルプスでは岩石氷河内にしばしば塊状氷が存在すると推定されたが,ブルックス山脈ではほとんど塊状氷を見いだせなかった。この結果は,積雪量が多く積雪期間が長いアルプスにおいて塊状氷の発達がよいことを示し,岩石氷河発生域において落石に覆われた残雪が岩石氷河内の塊状氷の起源であるという説を間接的に支持した。それらの成果は、国内開催の極域地学シンポジウムと、アメリカ地球物理学会で発表した。
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Research Products
(3 results)