2003 Fiscal Year Annual Research Report
フィンランドにおける知識基盤社会の進展に伴う高等教育の変容に関する実証的研究
Project/Area Number |
03J01514
|
Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
渡邊 あや 国立教育政策研究所, 生涯学習政策研究部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | フィンランド / 高等教育 / 知識基盤社会 / 国際化 / 大学間ネットワーク / 高等教育交流 |
Research Abstract |
本研究は、フィンランドを事例として、高等教育政策とそれによって生じた変化を検討することにより、知識基盤杜会の進展に伴う高等教育の変容の実態を解明することを試みるものである。研究初年度に当たる本年度は、高等教育の変容の原動力である諸要素のうち、国際化に焦点を当てて、調査を行った。その結果、以下の四点が明らかになった。 1.フィンランド政府が、1980年代末から高等教育の国際化政策を積極的に展開することにより、高等教育交流の量的拡大を、特に人的交流の面で推し進めたこと 2.その最も大きな推進力となったのがERASMUSやNORDPLUSなど大規模な高等教育交流プログラムであったこと 3、大規模な高等教育卒流プログラムヘの参加により急速に進む国際化の中で、各高等教育機関が積極的に国際化戦略を立案するようになったこと 4.大学間協定に代表される機関レベルの交流において、学生交流のみならず、教職員の交流やカリキュラム開発、質的保証、運営ノウハウの交換など、より広範な人的・物的交流が見られるようになったこと 特に興味深い要素として、大学間交流協定の在り様の変化がある。フィンランドにおいて、冷戦構造のもとで東と西をつなぐ文化交流の礎として登場した大学間協定は、対象地域を広げ、その形を多様化させながら、象徴から人的交流をはじめとする実態伴う交流へと発展してきた。そして今、その協定は、交流プラスαの目的を持つものへと変容しようとしている。こうした中で、その締結と維持には、大学の在り様と密接に関連した「哲学」を持つことが求められる時代になっている。どの大学と、どのような形で、何を目的として交流を行い、それを維持するのか。本年度の調査により、フィンランドの大学が、自らの特性を踏まえて、戦略的にこれを進めることによって、より意味のある大学間ネットワークを構築しつつあることが明らかになった。
|
Research Products
(1 results)