Research Abstract |
本研究は,「学力」に関する現在の問題状況の克服のために,これからの学校教育のあり方に対する提言をすべく,特に数学教育に焦点をあて,求められる学力を同定し,カリキュラム開発の理論的枠組みの提案ならびに実証を目的とする。この目的に対し,平成15年度は,国内外における「学力」の捉え方について,政策レベルの意図,国内外各種調査の理論的枠組み,教育学研究の動向を対象とし考察した。また諸外国のカリキュラム分析を通して,上述の「学力」の具現化について考察した。さらにテクノロジー利用について,特に図形学習に関して言及した。 考察の結果,「確かな学力」などの日本の「学力」の捉え方は,国際的な動向を見ても妥当であるが,そのための取り組みは,求められる「学力」が持つ学問体系に基づく性質と教科横断的な性質の調和の実現に対して,克服すべき課題を抱えている。この点の克服に向けて,諸外国のカリキュラム分析から得た示唆の概要は,1)テクノロジー導入,2)学校数学で扱う範囲の見直し,3)学校数学の領域構成の再考,4)一学年ごとの内容の見直し,5)内容の扱いの弾力化,である。これらは,教育実践での取り組みから変革を進めることが必要である。 この変革に対し,本研究のこれからの課題は,学校での数学の教授学習プログラムをデザインする理論的枠組みの提案である。二つの次元とは,教科内容の理解と定着の内容と発達を含むプロセスと,教科及び教科横断的な内容における活動を通して上述の「学力」の獲得の内容と発達を含むプロセスを,二つのレベルとは,学校全体で行われる各教科及び教科横断的な内容全体の組み立てと,個々の教師で行われる授業などの教授=学習過程の設計,である。これらの視点の導入は,求められる「学力」の育成にむけた改革の本質的な課題の克服とともに,これからの教科教育学の進展に寄与するものである。
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