2003 Fiscal Year Annual Research Report
共生細菌ブフネラを収納するアブラムシ菌細胞の宿主EST解析
Project/Area Number |
03J01542
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中鉢 淳 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門・生物資源情報基盤研究グループ, 特別研究員(SPD)
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Keywords | アブラムシ / 菌細胞 / ブフネラ(Buchnera) / キャップトラッパー / cDNAライブラリー / EST(Expressed Sequence Tag) / リアルタイム定量的RT-PCR |
Research Abstract |
エンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon pisum)の無翅単為生殖虫から、共生細菌(Buchnera)を内包する「菌細胞」を外科的に単離して全RNAを抽出。これに対してキャップトラッパー法(5'端にキャップ構造を持つmRNAのみを選抜する手法)を適用することで、従来のライブラリー作製法では排除することが困難であったBuchnera由来のRNAを効果的に除き、大多数のクローンが宿主菌細胞由来の完全長cDNAである良質なcDNAライブラリーの作製に成功した。 このライブラリーより、2870クローン分の5'-シングルパスシーケンシングを完了。すでに公共データベースに公開されているA.pisumのwhole bodyのESTデータ(1071クローン分。プリンストン大、米農務省による)をも含めてクラスタリングをしたのち相同性検索に基づくアノテーションを行い、各々のライブラリーでの出現クローン数を比較することで、菌細胞特異的な発現パターンを示す遺伝子の予備的なスクリーニングを行った。この結果、宿主-Buchnera間の各種アミノ酸の授受とそれに連関する代謝に関与すると思われる遺伝子群が高発現していることが示唆された。これはこれまでの生理学的研究およびBuchneraのゲノム解析により得られていた知見と一致するものと言える。さらに細胞分裂の抑制やアポトーシスの抑制に関わる複数の遺伝子が高発現していることも示唆されたが、これらは分裂をせずに肥大する菌細胞の性質との関連が期待され興味深い。またこの他に、転写因子、シグナル伝達関連など興味をひかれる遺伝子産物が多数検出された。 現在、リアルタイム定量的RT-PCR法を用いたcDNA定量を行うことで、上記遺伝子群の発現レベルについて検証作業を進めている。
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