2003 Fiscal Year Annual Research Report
マルカメムシ類における宿主-共生細菌間の相互作用と共進化
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03J01543
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
細川 貴弘 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門, 学振特別研究員(PD)
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Keywords | マルカメムシ類 / 腸内共生細菌 / 母子間伝播 / カプセル / 体内細菌量 |
Research Abstract |
マルカメムシにおける腸内共生細菌伝播様式について以下のことが明らかになった。 ・カプセルおよび中腸組織の顕微鏡観察から、カプセルには細菌以外の物質も含まれ、この物質はメスの中腸後端部で分泌されていることが明らかになった。これは共生細菌の垂直伝播をおこなうには母親に物質的なコストがかかることを意味する。 ・行動観察から、幼虫は孵化後ただちにカプセルから共生細菌を摂取し始め、約50分カプセルを吸った後、口吻をカプセルから引き抜き、卵塊のそばに集団を形成することが明らかになった。また細菌を摂取できない場合や、摂取細菌量が少ない場合は集団を形成せずに卵塊を離れる行動が見られた。これらのことから、カプセルから細菌摂取が幼虫の行動に変化をもたらすことが明らかとなった。 ・野外観察によって、母親はカプセル1つあたり約3.5卵を産むことが示された。それに対して、実験的にカプセル1つを複数の幼虫に吸わせると、6〜8匹の個体が正常に成長することが明らかになった。これらの結果は、母親は子が必要とする量よりも多めにカプセルを産んでいることを示している。この母親の行動は成長に必須な共生細菌をより確実に子に伝えるために進化したと考えられた。 ・定量的PCR法により、カメムシ体内の共生細菌量を定量する手法を確立した。上述の「幼虫がカプセルを吸う時間」は人為的に操作することが可能であり、それによって幼虫の摂取細菌量を人為的に操作できることが明かとなった。他の動物において体内共生細菌量を人為的に操作することは困難であるため、マルカメムシ類-腸内細菌の系の研究によって、今後共生の進化に関してこれまでにない知見が得られる可能性が高い。
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