2004 Fiscal Year Annual Research Report
変形にともなう断層帯の孔隙構造の変化と地震の発生過程
Project/Area Number |
03J01569
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 美紀 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 浸透率 / 孔隙率 / 圧密実験 / 高温・高圧3軸変形試験機 / 付加体 / デコルマ帯 / 異常間隙圧 / poroelasticity |
Research Abstract |
<低浸透層の圧密による間隙圧力の変化> 間隙水圧の上昇は岩石を不安定にし,破壊のポテンシャルを高める.多孔質の岩石を圧縮した場合,その岩石の置かれている環境が排水条件なのか,非排水条件なのかによって封圧,間隙水圧の増減,弾性率やポアソン比の値の違いについて理論的,体系的に論じられてきた.昨今このporoelasticityの理論を岩石にかかる圧力と間隙水圧の関係に応用し,地震の発生メカニズムについて論じる気運が高まっている.また付加体中に発達するデコルマの形成に関連し,デコルマ帯の直下の岩石では,周囲に比べ孔隙率が高くなっていることからデコルマ直下は間隙水圧が何らかの原因で増加したと考えられている。しかしながら,間隙水圧の増加の具体的なメカニズムについて言及している報告は少ない.常に高圧の流体が供給される場以外で間隙水圧が上昇するためは岩石が圧縮され,その中に含まれる孔隙の減少があり,孔隙中に存在する流体も圧縮される必要がある.さらに高い間隙水圧が継続的に保持される、もしくは増加し続けるためには,泥岩に代表されるような低浸透性の帽岩が流体の移動を妨げる方向に分布することが必要と考えられる。 上記モデルを実験で検証するため2つの砂岩の円柱ブロックの間に様々な厚さの低浸透性のシルト層を挟んだ試料を用意した.サンプルの上方は間隙水圧を10MPaに維持するようサーボ制御させるが,下方は制御から切り離し,浸透率の低いシルト層を通過しない限り排水されないようにした.その上で封圧を20MPaから120MPaまで100MPa/hr,300MPa/hr,600MPa/hrの昇圧速度で上昇させ,シルト層上部と下部に位置する砂岩中に発生する間隙水圧の変化を観測した.また封圧の昇圧の前後で浸透率を測定しその変化も観測した。実験の結果、シルト層の厚さが厚く,速い昇圧速度での条件ほどシルト層下方の砂岩中の間隙水圧は上昇し最大で48MPまで上昇した.配管のストレージを考慮し補正すると85MPaに相当する間隙水圧の上昇を示すことになる.間隙水圧の増分ΔPpと昇圧後のバルクの浸透率k,昇圧速度V_<Pc>の関係をまとめるとΔPp=1.62^*10^<-17>(MPa^*m^2)^* exp[8.86(sec/MPa)^*V_<Pc>]となった.数値的にはまだ予察であるが、付加による圧力の上昇速度と浸透率からデコルマ直下の間隙水圧の増加量を予測できる可能性がある.今後、データ数を増やし,昇圧速度と間隙水圧の上昇について計測を行うとともに実験後のサンプルについてX線CTや薄片での観察,および水銀ポロシメータを用いての孔隙率の測定を行う予定である.
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