2006 Fiscal Year Annual Research Report
変形にともなう断層帯の孔隙構造の変化と地震の発生過程
Project/Area Number |
03J01569
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 美紀 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 断層ガウジ / 粘土鉱物 / 脱水反応 / 非排水・排水条件 / 浸透率 / 異常間隙圧 |
Research Abstract |
地震のように急速な滑りが断層面にかかると,摩擦熱により滑り面が高温になる.変形面の高温化は岩石の溶融や孔隙に存在する流体を膨張させるなどの影響を引き起こし,結果,断層の挙動は不安定になり滑りが加速するとされている.変形中,断層ガウジは高温にさらされてどのような変化を示すのか?化学的にも機械的にもそれらについて研究された例は皆無である.今年度は断層岩を構成する主な粘土鉱物であるカオリナイトとモンモリロナイトについて高圧下での変形実験を行った.封圧80MPに固定し,30°斜めにプレカットした円柱形アルミナ(不透水)にそれぞれ粘土の粉体を1g挟んで0.1μm/secの軸変位速度を与えて剪断した.変形が降伏点を超えたところで試料の温度を10℃/分の速度で上昇させ,しばらく高温を保った後,30℃/分の速度で室温まで低下させた.今回の実験では乾燥させたサンプルを非排水・排水の各条件で実験し,周囲の岩石の透水性により脱水した高温の水が強度に与える影響を調べた. 昇温実験により,不透水層に挟まれた断層ガウジからの脱水は断層の強度を低下させ,カオリナイトガウジは480℃で,モンモリロナイトガウジは低温から始まり350℃で急激な摩擦強度の低下をもたらすことが示された.脱水による水圧の上昇は,排水条件に比較した非排水条件における強度低下が脱水による機械的な強度低下のみを示すと仮定すると,カオリナイトで64MPa,モンモリロナイトで72MPaもの上昇が見積もられた.また,冷却時には強度増加した固体部分の強度を示すようになることから,粘土鉱物からの脱水を引き起こすような高温を発生するような高速滑りは,それ自体が断層の強度回復機構になる可能性を持っていると言えるかも知れない.断層ガウジの地震発生に関わる新たなモデルを提唱できると考えられる.
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Research Products
(1 results)