2003 Fiscal Year Annual Research Report
メタン菌バイオマーカーに基づくメタンハイドレートの有機地球化学的研究
Project/Area Number |
03J01622
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大庭 雅寛 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | メタン菌 / バイオマーカー / メタンハイドレート / 有機地球化学 / 南海トラフ / 古細菌 / 2,6,10,15,19-ペンタメチルアイコサン / エーテル脂質 |
Research Abstract |
1.メタン菌のバイオマーカーの分析技術の確立 国内の水溶性天然ガス田において生息が確認されたメタン菌と同種のメタン菌(Methanothermobactor thermoautotrophicus ΔH)を嫌気培養して得られた細胞試料を用いて、メタン菌に特有な脂質成分である2,6,10,15,19-ペンタメチルアイコサン(PMI)や、メタン菌を含む古細菌に共通の脂質成分であるエーテル脂質の分析に最適な分離方法や誘導体化方法、ガスクロマトグラフ・質量分析計による同定・定量方法を明らかにした。 2.堆積物中のメタン菌バイオマーカーの濃度測定 平成11年度に実施された基礎試錐「南海トラフ」コア試料中に存在するメタン菌バイオマーカーについて、1.で得られた知見をもとに分析を行った。またメタン菌によるメタン生成が現在でも進行していると考えられている茂原及び新潟の水溶性天然ガス田から得たスラッジ試料や南海トラフ・四国沖表層堆積物試料、さらに古細菌による嫌気的メタン酸化が起きていると考えられている南海トラフ・第二天竜海丘の表層堆積物試料についても同様の分析を行った。 すべての堆積物試料において、エーテル脂質の一種であるアーキオールが検出されたことから、各堆積物中に古細菌が生息していることが明らかになった。その量から、それぞれの堆積物中における古細菌の生息量を見積った結果、約10^7〜10^8cells/g dry sed.と推測された。PMIや、近年、一部のメタン菌に特有なバイオマーカーとして注目されるヒドロキシアーキオールも各堆積物から検出された。しかし、その存在量が試料間で大きく異なることから、生息しているメタン菌の種類やその生息数が各堆積物で異なっていることが推察された。 以上の結果から、堆積物中に存在するメタン菌の脂質バイオマーカーを分析することで、その堆積物中に生息するメタン菌の種類や生息量を推測できる可能性が示された。
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