2004 Fiscal Year Annual Research Report
メタン菌バイオマーカーに基づくメタンハイドレートの有機地球化学的研究
Project/Area Number |
03J01622
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Research Fellow |
大庭 雅寛 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門・有機地化学研究グループ, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | メタンハイドレート / 南海トラフ / メタン菌 / 脂質バイオマーカー / バイオマス / 2,6,10,15,19-ペンタメチルイコサン / ヒドロキシアーキオール / アーキオール |
Research Abstract |
メタンハイドレートが大量に賦存する南海トラフ海底堆積物中のメタン菌由来の脂質バイオマーカーの有機地球化学的分析を行い、その鉛直分布や炭素同位体比などを調べることでメタン菌によるメタン生成記録を明らかにし、メタン生成の条件や実体を解明することを目的とした。 2,6,10,15,19-ペンタメチルイコサン(メタン菌に特有)は,多くの試料から検出されたが,測定チャート上で他の成分のピークと重なるため,定量が困難であることが判明した。ヒドロキシアーキオール(主にメタン菌に由来)の濃度は,堆積物1g(乾燥重量)あたり0.0-18.1pmol(極性脂質態:リン酸や糖が結合した形,生息菌のバイオマス指標)および0.0-10.2pmol(アルコール態:過去から現在までの積算バイオマス指標),アーキオール(古細菌全般に存在)の濃度は同じく0.0-168pmo1(極性脂質態)および0.0-297pmol(アルコール態)の範囲に分布しており,いずれも砂層では泥層よりも濃度が低い傾向が見いだされた。 アーキオールはヒドロキシアーキオールの約5〜15倍高い濃度で検出されたが,両者の鉛直分布は類似性が高く、さらに培養したメタン菌におけるそれらの割合が同程度であることから、アーキオールに対するメタン菌の寄与が大きい、つまり古細菌に占めるメタン菌の割合が大きいことが示唆された。このことと,アーキオールの炭素同位体比がPDBスケールで約-30%と高めであったことから,メタン菌の活動は主としてメタン生成であることが示唆された。 さらに脂質ベイオマーカーの鉛直分布と全有機炭素量の鉛直分布の類似性が高いことから、メタン菌の活動は、そこに含まれる有機物量に依存する可能性があることが推察された。コア試料の平均全有機炭素量が0.5%前後と有機物に乏しいことから、本坑井におけるメタン菌の活動度が全般的に低い可能性が推察された。
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