2005 Fiscal Year Annual Research Report
低環境負荷型機能性分子認識材料の創製と環境汚染物質分離・分析法への展開
Project/Area Number |
03J01625
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
兼清 泰正 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 糖 / ボロン酸 / 蛍光 / エキシマー / センサー / 国際研究者交流 / ドイツ |
Research Abstract |
糖類は、生体内でエネルギー源やDNA・RNAの骨格をなす非常に重要な物質であり、糖類の選択的かつ高感度な検出法の開発は非常に重要な課題である。本研究では、糖分子に対するインターフェースとしてボロン酸を用い、ボロン酸基を蛍光基やカチオン基と共重合したポリマーを合成することにより、水溶液中における新規の糖センサー開発に成功した。分子内にボロン酸基とピレン基を有するポリマーは、糖の存在しない水溶液中では比較的コンパクトなコンホメーションをとり、これによりピレン基間の会合が生じるため、ピレン基に励起光を照射するとピレン会合体に由来するエキシマー発光が観測される。ここにグルコースやフルクトースのような糖を添加すると、糖分子との結合に伴いボロン酸基上に負電荷が生じ、これによってポリマー鎖内に静電的反発が生じるため、ポリマー鎖はコンパクトなコンホメーションから拡がったコンホメーションに変化する。その結果、ピレン基間の会合が解消し、エキシマー発光の減少とモノマー発光の増大が観測される。この手法により、グルコースやフルクトースに対して10μMという極めて低い濃度での検出を実現した。特筆すべきは、本来ボロン酸に対する親和性の低いグルコースに対してもフルクトースに匹敵する感度を有する点であり、これは高分子化したボロン酸の隣接基効果によるものと考えられる。一方、ボロン酸基とピレン基に加えてカチオン基を共重合したポリマーは、グルコースやフルクトースのような電荷を持たない糖には応答せず、グルコン酸やグルカル酸のような負電荷を有する糖類に選択的に応答する。カチオン基を導入したポリマーの場合、糖の存在しない水溶液中ではポリマー中の正電荷間の反発により拡がったコンホメーションをとるが、負電荷を有する糖類との結合によりポリマー中の正電荷が中和されて静電的反発が解消するため、コンパクトなコンホメーションへと変化する。その結果、負電荷を有する糖類に対して、エキシマー発光の増大とモノマー発光の減少が観測される。今後は、種々の機能性モノマーとの共重合による選択性の向上や適用pH範囲の拡大など、本系の更なる高機能化に取り組む予定である。
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Research Products
(1 results)