2005 Fiscal Year Annual Research Report
生体の骨組織再生能を活性化する新世代骨修複材料の開発
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03J01627
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
内田 昌樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 人間福祉医工学研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | アパタイト / ラミニン / ペプチド / 細胞接着 / ナノ粒子 |
Research Abstract |
我々は過去二年の研究において、ラミニンやフィプロネクチンなど様々な生理活性機能を有するタンパク質を骨の主要無機成分であるアパタイトと複合化することにより、常温常圧の穏和な条件の下でチタン金属表面や高分子基板表面へ被覆する手法を確立した。さらに得られた複合材料が優れた生体適合性や細胞接着性を示すことを明らかにした。しかしながら、タンパク質担持材料を生体に埋入した場合、そのタンパク質により免疫反応が引き起こされる可能性が懸念される。一方、タンパク中で目的の生理機能を担う部位のみを担持すれば同部位は免疫応答には関与しないので、望みの生理活性を示し且つ免疫反応を引き起こさない材料が得られると期待される。そこで我々は、ラミニン中に存在し上皮細胞接着性を示すアミノ酸配列であるYIGSRをアパタイト層中に担持させるための条件を詳細に調べた。その結果、YIGSR鎖のみではアパタイト層中にほとんど担持されないのに対して、YIGSRに数個のグルタミン酸を付加したペプチド鎖はアパタイト層中に効率よく担持されることを明らかにした。これにより、ペプチド鎖をアパタイト中に担持させるための手法が得られた。またこの手法は、他の様々なペプチド鎖にも応用可能である。従って、アパタイトに適当な生理活性分子を担持させることにより、その用途が骨組織のみならず他の組織へも広がると期待される。また我々は、内径約20nm、外径約28nmのかご型構造を有するCowpea Chlrotic Mottle Virus(CCMVの外殻タンパク質の内部にアパタイトを形成させることにより、ナノサイズのタンパク質-アパタイト複合体を作製することを試みた。尚、同タンパク質はプラスに帯電したN-末端のアミノ酸約20残基がかご内部に向けて髭状にのびているため、かご内部はプラスに帯電していると考えられている。このCCMVをリン酸カルシウム過飽和溶液に溶解させたところ、常温常圧下でその内部にアパタイトは形成されなかった。一方、N-末端のアミノ酸をマイナスに帯電したものに置換した組み換えCCMVを作製したところ、同タンパク質内部に直径約15-18nmのアパタイトが形成された。一連の結果によれば、タンパク質内部におけるアパタイトの核形成にはマイナスに帯電した表面、特にグルタミン酸が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Research Products
(4 results)