2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01656
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
田端 宏充 独立行政法人産業技術総合研究所, 脳神経情報研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 追跡眼球運動 / 予測 / 準備 / 霊長類 / 脳 |
Research Abstract |
本年度は、霊長類の視覚ターゲット追跡の脳内メカニズムの解明のために、ヒトを被験者とした心理物理学的研究を中心に行った。視覚ターゲットの小さな揺れに対して引き起こされる滑らかな眼球運動の大きさを、追跡眼球運動のゲイン(眼球速度/視覚ターゲット速度)を計る指標として用いる実験パラダイムを開発した。そして、繰り返し追跡眼球運動を行っている実験ブロックは、静止している視覚ターゲットに対してサッケード運動を繰り返している実験ブロックよりも、眼球運動開始直前のゲインが増大していることを発見した。しかもその増大は、視覚ターゲットの動きが、視野の中心から遠ざかる場合よりも、視野の中心へ向かう場合の方が強かった。この結果は、視覚ターゲットが動き出すことが予測できるとき、視野の中心へ向かう視覚ターゲットに対して素早く追跡眼球運動を駆動する機構が働いていることを意味する。また、この予測に基づく視野の中心方向への追跡眼球運動の準備は、動き出す視覚ターゲットがあらかじめ呈示されているときに見られ、視覚ターゲットが現れるや否や動き出すときには見られなかった。この結果は、予測的なゲインの上昇には、あらかじめ視覚ターゲットの位置が分かっていて、その場所に空間的注意を向けている必要がある可能性を示している。以上の研究により、霊長類の視覚ターゲット追跡のための準備の脳内メカニズムの一端を明らかにすることに成功した。この成果の発表により、2003年度計測自動制御学会・生体生理工学シンポジウムにおいて、研究奨励賞を受賞した。この結果に基づき、来年度は、サルを使った行動・生理実験及び計算機を使った理論的研究へと発展していく予定である。
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Research Products
(1 results)