2003 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本女子高等教育の思想史-デモクラシーと女性をめぐる思想-
Project/Area Number |
03J01758
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
住友 元美 奈良女子大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近代史 / 女子教育 / 地域史 / 思想史 / 地方史 / 女性史 |
Research Abstract |
本年度は、近代日本社会における女性の家庭内役割と就労および教育に関する以下の研究を行なった。 1、1900年代以降、女子中等教育機関(高等女学校)が地域社会(現兵庫県小野市)に定着していく過程を分析し、裁縫技能修得を中心とする教育から、より高等な女子普通教育機関の整備・定着が求められていく背景に、日露戦後に顕著となる(1)就学・就労を契機とする農村から都市部への若年層の流出に歯止めをかけようとする動きや、(2)学歴社会化(何を学んだかではなく、どの学校を卒業したかが問題とされる)、(3)地域社会秩序回復における女性役割の高まり等が複雑に存在していたことを明らかにした。(『小野市史第三巻本編III』) 2、大正期における女性解放論者として、男女の対等、女性の個人としての自立や経済的独立の意義を説き、1910年代後半に平塚らいてうと母性保護論争を展開した与謝野晶子の思想形成について、彼女の私信と公開状(評論活動)という二種の手紙に着目して、思想史的分析を行なった。そこで、与謝野が1900年代に始めた評論活動を通じて、労働が自己表現であり社会貢献であるとの見地に1911年に達し、このことが、のちの彼女の社会改造論の基礎となっていたことを指摘した。(「ふたつの手紙-与謝野晶子の自己表現」) 3、愛知県を対象とする近現代史社会分野の研究業績を整理した。(「地方史研究の現状(愛知県)」) 4、母性保護論争において性別役割分業の徹底・家庭役割の強化を主張した山田わかの思想を分析し、彼女が日露戦後社会において女性が家事・育児を担うことは社会的分業であると理解して、より高度な女子教育を受けた「賢い母」による家庭・社会の改造を目指していたことを指摘した。(大阪歴史学会近代史部会報告) 5、教育学者として女子師範教育に携わった愼山栄次をはじめとする女子教育に関する史料の収集を行なった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 住友 元美: "ふたつの手紙-与謝野晶子の自己表現"女の手紙-実用と遊びの表現史(荒井とみよ他編). (仮題)(予定). (2004)
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[Publications] 住友 元美: "地方史研究の現状(愛知県)"日本歴史. (予定). (2004)
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[Publications] 奥村 弘: "小野市史 第三巻 本編III"小野市. 825 (2004)