2003 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞における高次リン酸化イノシトールのダイナミクス
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03J01767
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
三橋 尚登 奈良女子大学, 理学部, 特別研究員PD
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Keywords | イノシトールリン酸 / イノシトール1リン酸合成酵素 / 液胞 / シロイヌナズナ / ニチニチソウ / 培養細胞 / カルシウム / 亜鉛 |
Research Abstract |
本研究では,イノシトール六リン酸すなわちフィチン酸の生合成過程および液胞への輸送機構の解明のため,フィチン酸合成の鍵酵素と考えられるイノシトール1リン酸合成酵素に対する特異抗体を作成し,以下の成果を得た. これまでに,ニチニチソウおよびシロイヌナズナ懸濁培養細胞にフィチン酸の大量合成を誘導し,液胞内に蓄積させることに成功している.種子のフィチン酸の大部分がCa,Mgなどと結合していることから,次にフィチン酸蓄積機構に対する金属イオンの効果について調べた.リン酸とともに種々の金属イオンを加えて培養したところ,Ca,Mg,Znを与えた細胞では,リン酸のみを与えた場合よりもフィチン酸の蓄積が促進された.このとき,イノシトール1リン酸合成酵素のタンパク質量に変化は見られなかったが,細胞質および顆粒状構造物への局在が示唆された.また,Caを与えた細胞では主に液胞内にフィチン酸が蓄積していたが,Znを与えた細胞では,液胞にはフィチン酸が蓄積していないことが分かった.そこで,Zn添加後の細胞におけるフィチン酸およびZnイオンの細胞内局在についてショ糖密度勾配遠心法を用いて調べた.その結果,亜鉛添加後の細胞では,大部分のフィチン酸が細胞質で亜鉛と不溶性の結晶となっていることが示唆された. 植物体を用いてより多面的に研究を進めるため,平成15年5月7日〜8月19日,オーストラリア・キャンベラのCSIRO Plant Industryに滞在し,Alan Richardson博士の研究グループとの共同研究及び研究打合せを行った.本派遣研究では,単子葉植物の代表例としてイネ,双子葉植物の代表例としてシロイヌナズナを材料とし,種子に蓄積するフィチン酸の生合成の鍵酵素であるイノシトール1リン酸合成酵素のノックアウト植物の作製を行った.第2世代の種子の収穫を待ち,イオンクロマトグラフィーによりフィチン酸の代謝変動を解析する予定である.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Yoko Sekiguchi, Naoto Mitsuhashi, Yoshinori Inoue, Hitoshi Yagisawa, Tetsuro Mimura: "Development of a comprehensive analytical method for sugar phosphates in plants by ion chromatography with pulsed amperometric detection combined with a titanium oxide column."Journal of Chromatography A. (in press). (2004)
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[Publications] Yoko Sekiguchi, Naoto Mitsuhashi, Tetsuro Mimura: "Changes in sugar phosphates in Arabidopsis in response to phosphate nutrition measured by improved ion chromatography with pulsed amperometric detection combined with a titanium oxide column."Plant Biotechnology. (in press). (2004)
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[Publications] 三村徹郎, 三橋尚登, 関口陽子, 大西美輪: "植物の代謝コミュニケーション 植物分子生理学の新展開 III.トランスロケーション リン酸の輸送と細胞内分配"共立出版. 8 (2003)