2004 Fiscal Year Annual Research Report
大量ゲノム情報を活用したDNA解析による哺乳類の進化多様性に関する研究
Project/Area Number |
03J01833
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
二階堂 雅人 統計数理研究所, 予測制御研究系, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 適応 / 毛 / 針 / 収斂進化 / ケラチン / ハリネズミ |
Research Abstract |
本年度においては、ハリネズミの針部において大量に発現する遺伝子の同定をおこなった。サブトラクション実験の結果、毛部分と針部分を比較すると、明らかに針部分において、ケラチン関連遺伝子の発現が多かった。さらには細胞接着関連因子として知られているオステオネクチンも針部において大量に発現していることが明らかになった。これらはおそらく、毛から針の獲得という進化の過程において、ケラチンや細胞接着因子を大量に発現させることでより硬質な構造物をつくるために適応した結果であると考えられる。これからは、これらケラチンやオステオネクチンの発現量を増加させる上流因子の同定をおこなっていきたいと考えている。 さらには、以前より引き続いている研究を論文として公表したので、その内容を以下に示す。 鯨目の中でも特にヒゲ鯨亜目に対象を絞ってその系統解析をおこなった。その際に、まず核ゲノム情報としてレトロポゾンの一種であるSINEの挿入パターンを利用し、さらにはミトコンドリアゲノム全長配列を決定し、系統解析の指標とした。その解析の結果、ザトウクジラ属とナガスクジラ属の単系統性が核、ミトコンドリアゲノムの双方から強く示唆され、さらには、シロナガスクジラ、ニタリクジラ、イワシクジラ属の単系統性や南半球、北半球に分布するミンク鯨の単系統性なども示すことができた。特にザトウクジラ属とナガスクジラ属の単系統性は、伝統的な形態学的研究からは示唆されたことのない新規の系統群であり、系統分類学の中でも非常に重要な発見であると考えている。またSINEの挿入パターンがいくつかの遺伝子座において、互いに矛盾することから、このヒゲ鯨類が今から2000万年ほど以前に、大規模な適応放散を起こしたことが強く示唆された。 本研究の成果は、Systematic Biology誌に掲載が決定し、さらには現在Molecular Biology and Evolution誌に投稿中である。また邦文論文として化石にその研究結果が掲載されることが決定している。 加えて、SINEの挿入パターンを指標とした系統解析のプロトコル論文を発表した。
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Research Products
(4 results)