Research Abstract |
本年度は以下の研究成果を上げました. 二変数羃零型と呼ばれる単独の1階線形偏微分方程式[1+{α(x)+β(x,y)}yD_x+{a+b(x,y)}y^2D_y]u(x,y)=f(x,y)を考えます.但し,変数x,yは複素数とし,aは複素定数とします.また,係数α,β,b,fは原点の近傍で正則な関数で,α(0)≠0,β(x,0)≡b(x,0)≡0を満たすものとします. この方程式は形式的羃級数解u(x,y)=Σ^∞_<n=0>u_n(x)y^nをただ一つ持ちますが,この形式解は一般に発散累級数であることがこれまでの私の研究で既に分かっております.そこで,この発散解がボレル総和可能となる為に方程式が満たすべき条件を求めることを試みました.ここに述べたボレル総和可能とは,発散解を何らかの意味で漸近展開に持つような正則解が存在する,ということであり,この正則解の存在が保証されることによって,どちらかといえば代数的意味が強い発散解というものに解析的な意味が付加されます. 結果として次の事実の証明に成功しました:「a≠0のとき,常微分方程式の初期値問題x'=α(x),x(0)=0のある大域的可解性,およびf(x,0),(∂^nβ/∂y^n)(x,0),(∂^nb/∂y^n)(x,0)(n=1,2,...)に対するある大域的増大性(または減少性)を仮定すれば,発散解はボレル総和可能となる.」 a=0の場合は既に前年度の研究で同様の結果が証明されており,今年度の研究と併せてaが定数の場合に問題が解決されました.この二つの研究成果は論文として微分方程式論の専門誌「Journal of Differential Equations」に掲載が決定しています.
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