Research Abstract |
本年度は以下の二つの研究成果を挙げました. 1.複素領域における原点に特異点を持つ単独一階準線型偏微分方程式Σ^d_<i=1>a_i(x,u)D_<x_i>u=f(x,u)に対し,形式的冪級数解u(x)=Σ_<α∈N^d>u_αx^αが存在する為の条件を求めることを試みました(a_i,fは原点で正則な関数とする).そして,係数a_i,fと形式解uの零点の位数に対する条件,及び主要部から作られるベクトル場C^d∋x〓(a_1(x,0),...,a_d(x,0))∈C^dのヤコビ行列のジョルダン標準形に対する条件を課すことにより,uの一意存在を証明することに成功しました.一般にこのuは発散冪級数となりますが,その発散の大きさを求める為に,主要部のニュートン図形を定義し,それから定まる指数(ジュブレイ指数)を用いて発散の大きさを与えることに成功しました. 2.二変数冪零型の単独一階線型偏微分方程式[1+{α(x)+β(x,y)}yD_x+γ(x,y)y^2D_y]u(x,y)=f(x,y)の発散冪級数解u(x,y)=Σ^∞_<n=0>u_n(x)y^nがボレル総和可能となる為に方程式が満たすべき条件を求めることを試みました(係数は全て原点で正則な関数で,α(0)≠0,β(x,0)≡γ(x,0)≡0を満たすものとする).そしてその条件を,常微分方程式の初期値問題x′=α(x),x(0)=0のある大域的可解性,及び係数β,γ,fに対するある大域的解析接続可能性,という形で与えることに成功しました. なお,研究成果1は,論文として京都大学数理解析研究所発行の雑誌「Publications of Research Institute of Mathematical Sciences」に投稿中です.
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