Research Abstract |
Chromogranin B遺伝子(CHGB)は,統合失調症の発症脆弱性に関わる遣伝子座を探索する目的で行った,STRマーカーによるゲノムスクリーニング解析において,最も有意な連鎖所見の得られた領域に位置する候補遺伝子である。 平成15年度にはCHGB変異検索を行い,合計22個のSNPsを見いだした。これらSNPsと統合失調症との関連を検討した結果,Exon4内のSNPsにおいて,アリル頻度,遺伝子型頻度共に症例対照間で有意な差が得られた。このことから,CHGBは統合失調症の病態生理や発症脆弱性に何らかの影響を及ぼす重要な遺伝子であることが示唆された。 本年度は,統合失調症の臨床症状におけるCHGB多型の影響についての検討を行い,錐体外路症状発症群,若年発症群,解体の症状がみられた群,喫煙習慣を有する群において,健常対照者群との間でアリル頻度に有意な差を見いだした。双極性障害におけるCHGBの関連解析では,いずれのSNPsにおいても双極性障害との関連は見られなかったが,双極性障害II型に限ると,695G/Aにおいて有意な関連が認められた。今後ハプロタイプによる関連解析およびExon4以外のSNPsについても検討する。覚醒剤依存,精神病におけるCHGBの関連解析では,いずれのSNPsにおいても覚醒剤依存症との関連は見られなかったが,症例群を臨床症状別に分け検討したところ,Exon4前半に位置する複数のSNPsと精神病症状発症までの期間との関連が見られた。さらに,Exon4のSNPsを用いてハプロタイプ解析を行い,有意に関連するハプロタイプを見いだした。この領域全体についても有意な結果を得た。このことから,覚醒剤使用者における精神病症状発症の機序において,CHGBが何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。 なお,本研究は研究従事施設の倫理委員会の承認を得て行っている。
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