2003 Fiscal Year Annual Research Report
巡礼における宗教性の表出に関する宗教人類学的研究-近現代の四国遍路を事例として
Project/Area Number |
03J01926
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
浅川 泰宏 大正大学, 人間学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 巡礼 / 四国遍路 / 宗教 / 文化人類学 / 民俗 |
Research Abstract |
本研究は、巡礼空間における宗教的物語の共有・消費に関する当事者性からの検討と、現代資本主義社会における意味づけの解明という課題を遂行するために、四国遍路における現代的な宗教性の表出に焦点を当てた巡礼研究の新しいパースペクティブの提示を目的としている。 本年度は研究目的に掲げた課題である「接待の場における宗教的正統性」に焦点をあて、既に調査を行っていた徳島県阿南市等の南部地域に加え、調査が未着手であった徳島県北部の神山町にて集中的な聞き取り調査を行い、接待体験の語りの地域差がそれほど見られないことを確認した。5月には、2003年日韓人文学連合・国際学術大会にて、南部地域での調査をまとめた口頭発表「ムラにめぐりくる者-近代四国遍路における巡礼者の類型について-」を行い、韓国人研究者らとの意見を交換した。 また「宗教性」概念に関する理論的整理に関する研究については、3月に京都で開かれた巡礼研究会・日本民俗宗教学会合同シンポジウムにおいて、地理学者、民俗学者、歴史学者らと合同で巡礼研究の理論的展望に関する発表を行った。そこでは宗教学と地理学における巡礼論を整理し、両者の接合領域における巡礼研究の理論的展望を示した。まず、日本宗教学の歴史において、当初等閑視されていた巡礼が、1950年代に「民間信仰」という概念を通して研究対象として発見され、70年代に本格化、80年代頃から多様化し、そして1990年以降隆盛するという流れを示した。また、どちらかと言えば聖地に着目した宗教学に対し、地理学では「巡礼路」の研究を発達させてきたことを指摘し、その成果を確認した。なお現在はこの議論を発展させ、巡礼研究の学際的課題として、宗教的空間論・景観論としての巡礼研究の可能性を探索する論考の執筆を行っている。
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