2003 Fiscal Year Annual Research Report
記憶の脳内メカニズムの解明とその応用-手続き記憶を中心として-
Project/Area Number |
03J01927
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
望月 寛子 昭和大学, 医学部神経内科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 手続き記憶 / 獲得 / 学習 / 神経画像研究 / fMRI / 読字 / 言語 / 鏡像 |
Research Abstract |
鏡像文字を読む技能の習得には、複数の神経ネットワーク(視覚背側系・腹側系、小脳、線条体)の関与が示唆されている。しかしながら、学習にともなう各脳部位の活動変化は明らかではない。本研究では、鏡像文字の判読技能を修得している際の脳活動を4回に分けて測定し、その変化を比較検討した。方法:15人の健常者を対象に鏡像文字判読課題を施行し、その際の脳活動を3テスラMRIを用いて測定した。実験では、正像文字と鏡像文字を被験者に提示し、意味のある単語(real word)か意味のない単語(non-word)かについてボタン押しによって判定させた。被験者は上述の実験に3回連続して参加し、4週間後にも同様の実験に1回参加した。結果:文字刺激が提示されてから被験者がボタンを押すまでの反応時間を2要因分散分析で検討した結果、交互作用が有意であった(p<0.05)。鏡像文字に対する反応時間のみ実験を繰り返すことによって有意に減少した(p<0.01)。鏡像文字条件において有意な活動をみとめたすべての領域についてROI解析を行った。その結果、両側紡錘状回(BA19)、左下後頭回、右小脳虫部において有意な活動の減少を認めた。左縁上回では第2、3ランにおいて有意な活動の増加を認めた。右視床は1ヵ月後の再実験においてのみ高い活動を示した。右の中前頭回(BA9)、左補足運動野、右紡錘状回(BA37)、左紡錘状回(BA18)および左小脳半球では第1と第4ランにおいて有意な活動の増加を示した。まとめ:我々の実験によって、鏡像文字判読の学習初期には、視覚腹側系(紡錘状回、下後頭回)および小脳虫部が重要であり、中期から後期には視覚背側系(縁上回)が重要な役割を担っていることが示された。このような活動の変化は学習に伴う方略の変化を反映していると考えられる。一方で、視床は獲得した技能の保持に重要であることが示唆された。
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[Publications] 山中克夫, 望月寛子, 中村聡, 田ヶ谷浩邦: "MMSEに反映されるアルツハイマー病の認知障害の特徴"老年精神医学雑誌. 14. 765-774 (2003)
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[Publications] 望月聡, 望月寛子, 河村満: "パーキンソン病患者における系列動作(3)系列長の効果の検討"神経心理学. 19. 233 (2003)