2005 Fiscal Year Annual Research Report
群集構造から見た鳥類の生活史の進化-子にとっての餌生物と捕食者に着目して-
Project/Area Number |
03J01933
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
水田 拓 東邦大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 群集 / 生活史 / 巣の捕食 / 親による子の世話 / マダガスカル / サンコウチョウ / シキチョウ / プレイバック実験 |
Research Abstract |
2005年10月〜翌年1月にマダガスカル北西部アンカラファンチカ国立公園で野外調査を遂行した。マダガスカルサンコウチョウ(以下サンコウチョウ)の巣を発見し、巣の捕食者の同定や、捕食と営巣場所の特性の関係について観察・実験を行なった。巣の夜間の捕食者として、新たに樹上棲のヘビの一種Madagascarophis colubrinusが同定された。夜間における巣の捕食はこれまでにも確認されており、本種による捕食はかなりの頻度で起こっていることが示唆された。また昨年に引き続き、サンコウチョウの巣において捕食者の音声に対する親の反応を調べるプレイバック実験を行なった。潜在的な巣の捕食者の音声を流したときは、捕食者でない種の音声を流したときに比べて親の巣に入るまでの時間が長くなり、さらにその時間は巣のまわりの植生が密であるほど長い傾向が見られた。つまり、親は巣の捕食者が近くにいるときには巣に入るのを遅らせるが、その行動の変化は巣のまわりの植生の密度(すなわち捕食者の位置の特定のしやすさ)によっても影響を受けることが明らかとなった。同様の実験を、同一の捕食者に同じように脅威を持つ他種の警戒声を用いて行なったところ、親は他種の警戒声に対しても捕食者の音声を聞いたときと同様に反応し巣での世話の行動を変えていることが確認された。 さらに、別の鳥類マダガスカルシキチョウの巣において、親がヘビの脱皮殻を巣材として用いることを発見した。ヘビの脱皮殻の巣材利用は世界的にも珍しく、その機能はまだ明らかではないが、本種のほとんどの巣において見られたことから、巣の捕食回避のために本種が進化の過程で獲得した適応的な行動であろうと推察された。以上のように本研究は、鳥類が自らの繁殖成功度を減少させる巣の捕食者に対し、さまざまな捕食回避行動を生活史特性として進化させていることを示した。
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Research Products
(1 results)