2003 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期・近世初期ケルンにおける都市と教会の諸関係について
Project/Area Number |
03J02007
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
櫻井 美幸 京都府立大学, 文学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 宗教改革 / 都市史 / 教会 |
Research Abstract |
本年は、1540年代におけるケルン大司教ヘルマン・フォン・ヴィートによって試みられた「宗教改革」の大司教領への導入が、都市ケルンに及ぼした影響についておもに研究を行なった。まず大司教ヘルマン個人の思想と、「宗教改革」の展開について、都市史料、宗教改革関連の史料、当時の神学者達の著作を用いて検討を行なった。 次に、「宗教改革」導入の動きに都市ケルンがどのように反応したのかを、Grotenによって編纂された市参事会備忘録の記述を基に、考察を行なった。その結果、都市ケルンは「宗教改革」を受け入れる気はなく、カトリック体制を維持する姿勢が明確であったものの、対外的には内政干渉を恐れ、皇帝カール5世が「宗教改革」阻止に介入を公式表明するまでは都市として曖昧な態度を貫き通した、と結論した。 さらに、ケルン市民が「宗教改革」導入の動きにどのように対応したのかを、市参事会記録、市民の書いた日記等を中心に分析した。その結果、次の三人の市民が「宗教改革』に好意的な中心人物であったことが判明した。神学者オルデンドルプと、フランシスコ会士マイネルツハーゲン、聖マリア・リスキルヘン教区司祭クンツギンである。彼らはプロテスタントの宗教儀礼を市内で実行したが、市政府はそれを弾圧し、彼らを市外追放にした。市政府の迅速な対応のため、市内に動揺が拡大することはなく、カトリック体制の維持が確定した、と結論した。 なお、この研究成果は、比較都市史研究会で研究発表を行なった上で、『史艸』44号、「都市ケルンと大司教ヘルマン・フォン・ヴィートの「宗教改革」」として結実した。
|
Research Products
(1 results)