2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞核におけるイノシトールリン脂質情報伝達系の制御機構と生理的意義の解明
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03J02037
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
岡田 雅司 兵庫県立大学(姫路工業大学), 大学院・生命理学研究科(理学研究科), 特別研究員DC1
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Keywords | PLCd1 / 核-細胞質間輸送 / importin / Ca2+ / 虚血 / 神経細胞死 / 核収縮 |
Research Abstract |
前年度までに、高カルシウム濃度時にPLCd1はimportin b1と直接結合すること、細胞をカルシウムイオノフォアで処理するとPLCd1が核蓄積を起こすことを明らかにしてきた。活性中心のCa2+結合部位の変異体を細胞に発現させイオノマイシン処理を行うと、野生型と違い核蓄積が見られなかったことから活性中心のCa2+結合部位がPLCd1の核内輸送に必要であることが明らかとなった。生体内でこの現象が起きているかを確かめるために虚血性神経細胞死に焦点を当てた。まず、当研究室でラット海馬由来神経初代培養法を確立した。さらにイオノマイシン、タプシガルギン処理を行うと培養細胞と同様に内在性PLCd1の核局在が観察された。虚血性神経細胞死のモデル系である高濃度グルタミン酸処理でも内在性PLCd1の核局在が確認された。この核局在化にはどのような意義があるかを調べるために、PLCd1 KOマウスMEF細胞を用いて虚血などで頻度よく見られる核収縮に注目してイオノマイシン処理による実験を行った。レトロウイルスを用いたインフェクションの系を確立し、PLCd1KOMEFにGFP融合型PLCd1の変異体を各々感染させた株を樹立した。PLCd1が発現していないGFP発現株でもイオノマイシン処理で核収縮が観察されたことからPLCd1は高Ca2+濃度によって引き起こされる核収縮の必須因子では無いと言うことが明らかとなった。しかしPLCd1を発現させた細胞株では核収縮が促進され、逆にPLC活性が無くイオノマイシン処理で核移行を示さないPLCd1 E341A発現株では核収縮が抑制された。さらにNLSを融合させたコンストラクトを発現させた細胞株で同様の実験を試みたところ、NLS-PLCd1発現株では核収縮がコントロールに比べ促進したが、E341A発現株では変化が見られなかった。これらのことから細胞質側からもしくは細胞質から核への移行時にPLCd1が核収縮を引き起こすことが明らかとなった。またセミインタクト細胞を用いた核収縮アッセイを行ったところ、カルシウム濃度依存的にPLCd1はHeLa細胞の核を8割程度まで収縮させた。これらのことからPLCd1はその活性を軸として高Ca2+ストレスに晒された細胞の核を収縮させ、細胞死進行を亢進する因子の1つであることが示唆された。
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Research Products
(2 results)