2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J02046
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
長谷 千代子 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 徳宏タイ族 / 中国 / 少数民族 / 国民形成 / 実践 / 宗教 |
Research Abstract |
平成16年度の主な目標は、中国雲南省徳宏州においてこれまでに行なった調査の結果を総合的に分析し、国民形成過程における少数民族の生活や文化の変容について博士論文にまとめることであった。分析では、国民形成の過程における公的な言説の中で主に用いられた「風俗習慣」「迷信」「民族伝統文化」などの文化にまつわるカテゴリーの語彙が、徳宏タイ族というある少数民族の人々が行なうさまざまな文化的実践にどのような影を落としているのかを明らかにするという方法をとった。その結果分かってきたのは、そうしたカテゴリーの語彙の根底にある近代合理主義的な価値観を受け入れる人々もいる一方で、そうした価値観が主流となっていることを受け止めながらも、必ずしもそれにはそぐわない実践も産出され続けていることである。しかもそうした実践は単に過去の実践方法を維持・保存するかたちで行なわれるのではなく、文化にまつわる公的なカテゴリーの矛盾や盲点、あるいはカテゴリーと現実との乖離を利用しながら現代的な意義を取り込んで刻々と再編されている。その再編は経済的社会的なグローバリゼーションの動向も視野に入れて行なわれており、中国という国家に対するあからさまな反抗の形こそとらないが、ある面で国家の国民化計画の思惑を超えているのである。 この成果については7月から12月にかけて各種研究会や学会で発表しながら徐々にまとめてゆき、年度末までに約26万字の博士論文の形にすることができた。細部に手を加えたのち、来年度のはじめには正式に提出する予定である。この他4月、10月、2月に現地調査を行い、3月末には国際宗教学会に参加して中国関係の研究者との交流を深めた。
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Research Products
(1 results)