2003 Fiscal Year Annual Research Report
スピノザとホッブズの自然主義的人間理解における認識、感情、倫理及び知への欲求
Project/Area Number |
03J02059
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Research Institution | Toyo University |
Research Fellow |
木島 泰三 東洋大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ホッブズ / スピノザ / 好奇心 / 力 / 自然主義 / コナトゥス / 自己保存 / 利己主義 |
Research Abstract |
1.ホッブズについて、「コナトゥス」概念から統一的に「認識」と「意志」を把握する、という基本的な構想の中で、ホッブズの言語論を定位する、という作業を行い、「ホッブズの「観念」試論・後編」と題する草稿として東洋大の大学院授業内の場を借り発表した(なお、「前編」は数年前に法政大大学院の研究誌『哲学年誌』に発表)。この論考はさらに整理を加えた上でホッブズの認識論を論ずる章の一部となる予定であり、また単独の論文としての公表も準備中である。 2.スピノザにおける「倫理の自然主義的基礎づけ」の問題、とりわけ、個体の「自己保存」の原理から派生すると言われる「心理的利己主義」と道徳律との結びつきの問題を考えるにあたり(なお、同様の問題提起はホッブズに関してもしばしばなされている)、主に英語圏での「利己主義と道徳」をめぐる近年の考察についての資料収集と検討を行った。この問題関心は一部には佐藤拓司氏の書物『堕天使の倫理-スピノザとサド』(前身は氏の学位論文学位論文「スピノザとサド:知性の自律と道徳の自然主義的基礎づけ」)に触発されたものであり、その成果は筆者が『スピノザーナ:スピノザ協会年報』に公表した氏の書物への書評に反映されている。 3.論文「ホッブズにおける契約論と「力の合一」」を執筆し、1)ホッブズの政治論のうちに「契約論」に収まらない「人間的力の自然誌」を見いだすことで、ホッブズにおける自然主義的人間理解の道徳及び政治学への適用のあり方をさぐると共に、2)ホッブズの理想とする人間相互の結合形態に対して「真理探求」が持つ役割の重要性を明らかにすることにより、「知への欲求」としての「好奇心」概念の意義を問う、という博士論文の中心的主題への一つのアプローチも試みた。 4.その他、ホッブズラテン語著作集を始めとする基礎的資料の充実と、スキャナ等のコンピュータ環境の充実による研究の効率化をはかった。
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Research Products
(2 results)