2004 Fiscal Year Annual Research Report
スピノザとホッブズの自然主義的人間理解における認識、感情、倫理、及び知への欲求
Project/Area Number |
03J02059
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Research Institution | Toyo University |
Research Fellow |
木島 泰三 東洋大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | スピノザ / ダマシオ / 感情 / 心の哲学 / 自然主義 |
Research Abstract |
本年度は主にスピノザの「心の哲学」に関する研究を重点的に掘り下げた。その際、十七世紀の自然主義者の思想の現代的意義を考察するための一前提として、現代の心の哲学や感情の哲学、および認知科学、心理学、脳科学などの隣接分野の中の必要と判断されるトピックに関する調査をある程度立ち入って行った。内容としては、M.Nussbaumの感情論や、A.Damasioの心脳論、およびそれらの研究に対するスピノザ研究者からの応答などである。その成果は『スピノザーナ』誌掲載の神経生理学者Damasioのスピノザ論に関する書評(サーヴェイ論文的な研究動向の報告を簡略ながら含んでいる)にまとめられた。Damasioは第一線の脳科学者であると同時に独創的な理論家でもあり、いわゆるデカルト的二元論を基礎にした既存の脳理論に対し心的過程における「感情」と「身体」の重要性を強調する観点からスピノザの洞察を高く評価する。書評ではDamasioの立場にスピノザの現代的解釈の可能性を見ると共に、スピノザの自然主義との比較からDamasioの倫理や価値に対する見解の問題点を考察した。『夏代思想』誌での翻訳の作業(脳生理学者リベの手になるデカルト論を含む)も同じ方向での一つの研究成果である、さらに、スピノザ論に関する研究成果については、一月に京都で開かれたスピノザ研究会での発表「スピノザの心身問題再考一「二元論解釈/一元論解釈」論争を越える試み」において経過報告を行い、博士論文執筆に向けての多くの有益なコメントを得た。発表では、まず現代の「心の哲学」の観点からスピノザの心身論を評価する意義と問題点を考察し、次いで発表者なりのスピノザ心身論の全体像の素描とその特異性の指摘を行い、現代の心身論の議論の基盤そのものを問うような視座を求める試みを行った。
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Research Products
(2 results)