2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J02123
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岩倉 百合子 新潟大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | EGF / ドーパミン / シェディング / 線条体 |
Research Abstract |
上皮成長因子(EGF)を初めとする細胞増殖因子は、中枢神経系において、その受容体と共に広く発現し、ドーパミン神経等に対する神経栄養因子としての作用を持つことが示唆されている。しかし、脳機能におけるその生理的意義や調節機構は未だに明らかになっていない。本研究では、脳内に存在するEGFの合成と放出調節の実態の解明を目的とし、神経細胞における機能的な回路の発達が、どのようにEGFによって制御されているかを明らかにするべく、平成15年度の目標として、(1)初代培養神経細胞におけるEGFの放出制御のメカニズム、(2)中脳ドーパミン性神経細胞に対するEGFの生理活性、の解明について重点的に研究をおこなってきた。それぞれの研究結果の概要は以下に示す通りである。 (1)酵素免疫測定法(ELISA)を用いた定量的な測定により、ラット線条体初代培養神経細胞において、ドーパミン刺激依存的に神経細胞からのEGF様因子の放出がみられた。この現象にはドーパミンレセプターのD1サブタイプが関連していた。また、このようなEGF様因子の放出には、細胞外領域の切り出しであるシェディングと開口放出の2種類の経路があることが考えられた。 (2)ヒトパーキンソン病患者の線条体では、EGF様因子量と共にEGF受容体量が減少しており、60HDAでドーパミン性神経細胞を障害した(パーキンソン病モデルとして広く使われている)ラット線条体においても同様の現象が見られた。また、免疫組織化学的手法により、EGF及びその類縁体であるTGFαは中脳ドーパミン性神経細胞の染色性を増加させ、実際に神経栄養因子としての役割を果たしていることが示唆された。 本年度の研究成果のうち、(1)に関しては、第46回日本神経化学会大会において一般演題及びミニシンポジウムで発表された。現在は、(1)(2)共に論文として公表するべく、まとめを進めている。
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