2003 Fiscal Year Annual Research Report
前頭前野領域を中心とする高次脳機能の,神経回路アーキテクチャとしての解析
Project/Area Number |
03J02170
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
山下 幸樹 上智大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 計算論的神経科学 / 前頭前野 / ドーパミン / ワーキングメモリ |
Research Abstract |
平成15年度において、私は生理学的研究によって明らかにされている、前頭前野神経回路とドーパミン受容体活性間における逆U字型特性のメカニズムについて、モデル解析による研究を行った。研究の発端は2003年に発表したIFモデルを用いた発火ニューロン回路網を用いた研究であるが(Yamashita and Tanaka 2003)、今回ニューロンモデルに関しては、制御工学的解析を可能にするために、従来用いてきたIFモデルを簡略化した状態方程式モデルを適用した。得られた結果から主に以下の仮説が導き出された: 1、逆U字型特性の低ドーパミン領域における前頭前野神経活動の低下は、興奮性信号伝達の欠如によるものである。 2、逆U字型特性の高ドーパミン領域でのニューロン活動の低下は、抑制性ニューロンの内在的な変化、すなわちカリウムチャネルに対するドーパミン効果が促進されるために起こる。 3、抑制性ニューロンへのドーパミン効果が過度に高くなると、前頭前野における持続活動は不安定になり、さらには神経回路内でのSN比を低下させる(以上の研究成果に関する論文については現在査読中である)。 このような特性が妥当であるとすると、前頭前野内のドーパミンレベルはワーキングメモリプロセス内で最適レベルに制御されている必要があるだろう。従って、おそらく前頭前野を取り巻く回路においてドーパミンレベルの制御機構があると考えられる。今後はその制御機構について解析していこうと考えている。その際には、従来用いてきたニューロンモデルによるより生物学的なモデル解析に加えて(Yamashita and Tanaka 2003)、今年度新しく導入した制御工学的手法の適用が非常に有力な武器になるだろう。
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Research Products
(1 results)