2004 Fiscal Year Annual Research Report
液体中における鉄原子のダイナミクスの核共鳴散乱による研究
Project/Area Number |
03J02292
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
春木 理恵 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 核共鳴散乱 / イオン / メスバウアー効果 / 放射光 / X線 / フェリチン / 溶液 |
Research Abstract |
実験の効率を上げるために、核共鳴前方散乱用の積層型アバランシェ・フォトダイオード(APD)検出器を用途別に3種類、φ3mm素子(厚み30μm)×4枚、φ3mm素子(厚み150μm)×4枚、3×5mm^2素子(厚み150μm×4枚、の作成を行ない、性能を評価し、PF-ARのNE3実験ステーションでの実験に用いた。φ3mm素子(厚み150μm)×4枚においては、NE3での核共鳴前方散乱実験においてこれまでの単素子に比べて検出効率が3倍近くに向上した。この検出器を利用することで、陽イオン交換膜ナフィオン中の鉄イオンの低温における核共鳴前方散乱測定を、KEKのPF-ARのNE3実験ステーションで行うことに成功した。実験結果は、メスバウアー分光法で得られる結果と一致しており、凍結した水溶液中の2価の鉄イオンと同じ電子状態を持つという結果が得られている。今後、実験装置およびサンプルの改良を加えることで、信号の収量を上げて、イオン交換膜中の水の中にある鉄イオンの状態をより詳細に知ることが可能であると予想される。 また溶液中の鉄イオンの錯体の応用として、昨年度に引き続き、熊本大学工学部の冨永昌人氏との共同研究により、鉄の貯蔵量の少ない鉄貯蔵蛋白質フェリチンのSPring-8、BL11XUでの核共鳴非弾性散乱実験を行ない、蛋白質内部に貯蔵された鉄原子の状態を測定した。サンプルに関しては、核共鳴散乱実験に合わせて、鉄の安定同位体Fe-57で富化したものを用意した。鉄を少なくした場合のフェリチンの核共鳴散乱スペクトルは、鉄が多い場合のフェリチンのスペクトルとは異なっており、鉄の微粒子としての性質よりも蛋白質との相互作用が表れていると考えられる。そのためモデル物質として、いくつかの鉄の有機錯体の核共鳴散乱実験も行ない、比較を行なっている。
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Research Products
(1 results)