2004 Fiscal Year Annual Research Report
微細藻類の葉緑体退化に伴う原油成分の分解・資化代謝系誘導に関する研究
Project/Area Number |
03J02367
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
上野 良平 東京工科大学, バイオニクス学部・日本学術振興会特別研究員 PD
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Keywords | Prototheca zopfii / 原油成分 / 耐熱性 / PUF担体 / 水圏微生物 / 分子系統解析 / クロレラ |
Research Abstract |
A:酵母様藻類プロトテカ(原油分解藻)、クロレラ、および殺虫藻の分子系統解析 【目的】光合成色素を欠く2種の微細緑藻Prototheca zopfii(原油を分解資化する)と、Helicosporidium sp.(伝染病を媒介する昆虫を死滅させる)は、核および白色体由来rDNA塩基配列に基づく分子系統解析から類縁関係にあると推定されている。本研究の分子系統解析では、これら2種と類緑関係にあると予想されるPrototheca属から数株のrDNA塩基配列情報を加えることによって、原油分解藻と殺虫藻の分子系統学的関係をより高い精度で推定する。 【方法】各Prototheca属藻株の核由来SSU rDNA全長とLSU rDNA D1/D2領域をゲノムからPCR増幅した。各増幅DNA断片をサブクローニング後、塩基配列を決定した。分子系統樹は、各々のデータセットに最適な塩基置換モデルをhierarchical likelihood ratio test(hLRT)の結果に基づき選定後、最尤法を用いて構築した。 【結果】Helicosporidium sp.とP.zopfiiが、直接同じ祖先を共有する関係として解像されることはなかった。しかし、P.zopfiiを含むPrototheca属全体とHelicosporidium sp.が同じ緑藻祖先(現存するクロレラでは"Chlorella" protothecoides)に由来している可能性は極めて高かった。Helicosporidium sp.は、進化の過程でP.zopfiiを含むPrototheca属藻種を生んだ系統とは分岐して、独自の進化を遂げたものと考えられた。Helicosporidium sp.は、いずれのPrototheca属藻株からも著しく長い遺伝的距離を示すことから、本藻がいつPrototheca属に認めない殺虫能力を獲得したか推定することは困難であろう。 B : PUF(発泡ポリウレタン)担体に固定化した原油分解藻Prototheca zopfii耐熱性株が示す炭化水素分解特性の解析 【目的】光合成色素を欠く微細藻Prototheca zopfiiは原油中の炭化水素を分解資化する唯一の緑藻種である。本藻種の炭化水素分解能を高める方法として1.疎水性担体であるPUFへの細胞固定化、2.耐熱性株の使用が有効であることが知られる。本研究では、これら2つの方法を組み合わせることによって、さらなる炭化水素分解の最適化を試みた。 【方法】P.zopfiiの耐熱株RND16および中温性株ATCC30253の細胞をPUF担体に固定化、または非固定の状態で1%(v/v)炭化水素(n-アルカン:C_<14>-C_<17>各37.5mg,多環芳香族:ナフタレン、フェナントレン、ピレン各2mg)を含む20mLのYNB培地に添加して、培養中の炭化水素分解速度および炭化水素分解量を比較した。本実験は、25,30,35℃の各温度で行った。 【結果】耐熱性株細胞をPUF担体へ固定化した場合、中温性株を固定せずに使用した条件と比較して、n-アルカンの分解速度および分解量の値は、それぞれ4.6倍、2.6倍高く(25℃)、同様の傾向は30℃でも認められた。また、耐熱性株による分解では、固定化を行うと炭化水素分解が始まるまでのtime lagが短縮した。他方、多環芳香族炭化水素の分解は固定化を行うと著しく抑制され、その傾向は炭化水素分解能が高い耐熱性株で顕著に認められた。すなわち、P.zopfiiによる炭化水素分解において、耐熱性株の利用とPUF担体への細胞固定化の相乗効果は、n-アルカン分解で認められるが、芳香族炭化水素の濃縮を引き起こすことがわかった。
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Research Products
(3 results)