2005 Fiscal Year Annual Research Report
菌根菌種の違いがクロマツの水分吸収機能およびマツ材線虫病抵抗性に与える影響
Project/Area Number |
03J02435
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
浅井 英一郎 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 菌根 / マツ材線虫病 / 抵抗性 / マツノザイセンチュウ / 根端数 / ショウロ / オオキツネタケ |
Research Abstract |
本研究では鳥取砂丘クロマツ海岸林より3年間で延べ15種類の菌根菌を分離・培養した。それらのうち、ショウロ、オオキツネタケ、コツブタケ、テングタケ、シモコシの4菌株を接種したクロマツ実生苗に対するマツノザイセンチュウ(以下線虫と略す)の樹体内侵入率を比較し、各菌根菌種のマツ材線虫病に対する耐性の大小を比較することができた。 線虫接種直前の苗の木化率はショウロ、オオキツネタケ、コツブタケ接種区で対照区と比べて有意に高くなっていた。また、ショウロ、オオキツネタケ両接種区における樹体内への線虫侵入数は菌根菌非接種区と比べて有意に低下していた。ショウロおよびオオキツネタケを接種した苗の実験終了時の総根端数は非接種苗と比べて有意に多かった。今回供試した菌株のうちオオキツネタケの菌根化率が最も高く、ショウロはこれに次ぎ、コツブタケはわずかに菌根化が見られた程度であった。残る2菌株に関しては菌根化を確認できなかった。ショウロおよびオオキツネタケの接種はクロマツ実生苗の根端数を増加させ、宿主であるクロマツに効率の良い水養分の吸収を行わせることで、クロマツ苗の線虫に対する耐性を高めたことが示唆された。菌根菌の感染は萎凋病であるマツ材線虫病の枯死率を下げたという報告は過去にも数例存在したが、今回行ったモデル実験によりその仕組みの一端を解明することができた。今回用いた実験系では培養不可能な菌、あるいは成木に対してのみ菌根形成を行う菌種の材線虫病抵抗性を検定することができない。また、土壌中の水養分量や宿主植物の生育環境は苗の菌根化率・根端数に大きく影響するため、今回結果が出なかった菌種も条件によっては宿主の線虫抵抗性に寄与する可能性がある。しかし、本実験の結果は、野外において宿主クロマツの菌根感染率を高め、根端数を増加させてやることでマツ材線虫病の被害を軽減できる可能性を示唆している。
|
Research Products
(1 results)