2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト21番染色体移入によるダウン症候群モデルマウスの作製とその解析
Project/Area Number |
03J02459
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
香月 康宏 鳥取大学, 医学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ダウン症候群 / 染色体導入技術 / 染色体改変 / ES細胞 / 2次元泳動法 / PEBP / mlc2a / ヒト21番染色体 |
Research Abstract |
ダウン症に認められる症状とその症状を引き起こす遺伝子との対応を明らかにする目的で,これまでにヒト21番染色体を高率に保持するキメラマウスを作製し、心奇形、行動異常などのダウン症類似の表現型を観察した。しかし、ヒト21番染色体は組織間によって保持率が異なり、マウス解析の際には常に染色体保持率を考慮しなければいけない、という問題点があった。そこで今年度は、1)上記の問題点を解決するために様々なヒト21番染色体領域をマウス個体内で安定に維持する動物モデルを作製し、2)ダウン症の心奇形の原因となる遺伝子発現の差を網羅的に解明するため、上記のモデルマウスを使って2次元電気泳動法により心臓におけるタンパク質発現の差を解析した。 具体的には、染色体改変技術を用いてヒト21番染色体上のダウン症候群候補領域(21q22.12-22.2 Down Syndrome Critical Resion;DCR)約5Mbを含む2つの特定の領域をマウス染色体末端に人為的にCre-loxPシステムを用いて転座させる方法で外来染色体を安定に保有するTcマウスを作製した。また、この種々のヒト21番染色体領域を保持するモデルマウスの心臓を用いて2次元電気泳動法によりタンパク質の発現を網羅的に解析した結果、完全長21番染色体を保持するモデルマウスにおいては同じ系統のコントロールマウスに比較して内因性マウスmlc2aとPEBPのタンパク質の発現が低下していた。一方、ETS2遺伝子よりテロメア側を切断したヒト21番染色体領域を保持するモデルマウスにおいてはこれらのタンパク質の発現がコントロールマウスと同等に回復していた。以上のことからダウン症モデルマウスにおいてmlc2aとPEBPの発現低下を誘導している遺伝子がヒト21番染色体上のETS2遺伝子からテロメア側に存在することが示唆され、染色体改変技術がダウン症心奇形の発生に関与する遺伝子のマッピングに役立つことが示唆された。(本研究内容は発表済み、研究発表の欄参照) 今後は個体レベルでのダウン症の表現型の解析を行い、ダウン症発症のメカニズムを解明するため特に胎仔期におけるヒト21番染色体上の遺伝子発現と表現型との関係を調べる。
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[Publications] 木村元思: "Dlx5, the mouse homologue of the human imprinted DLX5 gene, is biallelcally expressed in the mouse brain"Journal of Human Genetics. 出版中.
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[Publications] 香月康宏: "Human chromosome 21q22.2-qter carries a gene(s) responsible for downregulation of mlc2a and PEBP in Down syndrome model mice."Biochem Biophys Res Commun.. 317・2. 491-499 (2004)
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[Publications] Wang CC: "Molecular hierarchy in neurons differentiated from mouse ES cells containing a single human chromosome 21"Biochem Biophys Res Commun.. 314・2. 335-350 (2004)
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[Publications] G.Lubec (ed.): "Advances in Down Syndrome Research (Journal of Neural Transmission Supplement 67)"Springer WeinNewYork. 242 (2003)