2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト21番染色体移入によるダウン症候群モデルマウスの作製と解析
Project/Area Number |
03J02459
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
香月 康宏 国立大学法人鳥取大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ダウン症候群 / 染色体導入技術 / 染色体改変 / ES細胞 / プロテオーム / マイクロアレイ / ヒト21番染色体 / トリソミー |
Research Abstract |
ダウン症候群は21番染色体トリソミーにより生ずる先天性疾患であり、精神発達遅滞や心奇形など多様な症状を呈する。しかしながら患者間の臨床症状に大きな差がみられ、多数の遺伝子が関与していることから、症状と21番染色体上の遺伝子との関連付けは困難である。そのためダウン症候群に近い表現型をもつ疾患モデル系が求められていた。そこで1)染色体導入技術および染色体改変技術を用いて、ヒト21番染色体を保持する新しいダウン症候群モデルマウスを作製し、2)ヒト21番染色体がマウスゲノムに及ぼす影響をマイクロアレイ、プロテオームにより解析した。 具体的には、染色体改変技術を用いてヒト21番染色体上のダウン症候群候補領域(21q22.12-22.2 Down Syndrome Critical Resion ; DCR)約5Mbを含む2つの特定の領域をマウス染色体末端に人為的にCre-loxPシステムを用いて転座させる方法で外来染色体を安定に保有するES細胞を作製した。このES細胞を用いて神経細胞にin vitroで分化誘導を行い、神経分化初期におけるヒト21番染色体の遺伝子発現への影響をマイクロアレイ解析、プロテオーム解析により調べたところSOD1,CCT8などヒト21番染色体上の遺伝子の発現上昇も観察されたが、マウス染色体上の発現上昇(HnrnpF,Krt2-8,Anxa4)や発現低下(AI850305,UchL1)が観察された。(本研究内容は発表済み、研究発表の欄参照)このことからヒト21番染色体が遺伝子量効果だけでなく様々なレベルでヒト21番染色体以外の染色体上の遺伝子発現制御をかく乱することが明らかになった。また、上記のES細胞からキメラマウスを作製することによりヒト21番染色体特定領域を高頻度にマウス組織で維持できることが明かとなった。今後は個体レベルでのダウン症の表現型の解析を行い、ダウン症発症のメカニズムを解明するため特に胎仔期におけるヒト21番染色体上の遺伝子発現と表現型との関係を調べる。
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