2003 Fiscal Year Annual Research Report
チンパンジーにおける生殖生物学的特性の地域変異に関する研究
Project/Area Number |
03J02628
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
藤田 志歩 岐阜大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生殖生物学 / ホルモン / 繁殖パラメータ / 生態学 / 環境要因 / 地域変異 / タンザニア:ギニア / チンパンジー |
Research Abstract |
本研究は、生殖生物学的特性の地域異変に影響を及ぼす要因および変異の程度を明らかにすることを目的として、タンザニア共和国・マハレ山塊国立公園およびギニア共和国・ボッソウ村に生息する野生チンパンジーの生息環境、活動および生殖生物学的特性を比較する。本年度は、これまでに得られたデータを用いて以下のような分析を行った。 1.調査地において20年以上に渡る長期調査によって得られたメスの繁殖成績に関する資料を用いて、繁殖パラメータを算出し、その比較を行った。その結果、マハレのメスはボッソウのメスより性成熟年齢が遅く、出産間隔の長いことが明らかとなった。 2.これまでの現地予備調査によって採集したチンパシジーメスの糞サンプルを用いて、生殖関連ホルモン濃度の測定を行った。その結果、マハレのメスはボッソウのメスより卵胞期におけるエストロゲンレベルおよび黄体期におけるプロゲステロンレベルの低いことが明らかとなった。 これらの結果から、マハレとボッソウのメスでは栄養状態に差があり、ホルモンの合成あるいは分泌量に差が生じたと考えられた。さらに、このような卵巣機能の制約の程度によって、繁殖成績に差が生じると考えられた。したがって、チンパンジーの採食に関わる生息地の環境条件がメスの栄養状態を介して卵巣機能に影響を及ぼし、これが野生チンパンジーの生殖生物学的特性の地域変異につながることが予測された。来年度は、両調査地において、チンパンジーの食物となる植物の生産量、メスの活動パターンおよび食性について調べるため、現地調査を行う予定である。 なお、本年度の研究成果については、第19回日本霊長類学会(仙台、2003年6月)および国際シンポジウム「アフリカ大型類人猿 その進化、多様性および保護」(京都、2004年3月)において発表した。
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Research Products
(1 results)