2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J02782
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
佐々木 なおみ 東京芸術大学, 大学院・音楽研究科, 日本学術振興会特別研究員PD
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Keywords | カンタータ / 17世紀 / ローマ / 史料研究 |
Research Abstract |
本研究は17世紀ローマにおけるカンタータの活動史解明を目的とするものである。今年度前半は、ローマの音楽活動を保護した1)バルベリーニ家、2)キージ家、3)スウェーデン女王クリスティーナの宮廷を対象に、そこに仕えた10人の作曲家に関する生涯と作品、先行研究について予備的調査を行った。後半期はその結果に基づいて、ヴァチカン教皇庁図書館における27日間の史料調査を行い、上記三つの宮廷記録の全般的把握、および各宮廷の音楽史料の現存状況の確認を進めた。さらに調査を通じて見出した関連史料の読み込みから、以下の研究成果を得ることができた。 1.各宮廷がローマ内外の宮廷と交わした多数の書簡から、各貴族の交友関係と影響力の範囲、使用人の個人名と職種(蔵書係、執事、神学顧問、秘書、室内補佐官、代理官)が明らかになった。その他、教皇によるバルベリーニ家ローマ追放に関する史料や、クリスティーナ女王の「アルカディア・アカデミー」開設時の記録等を見出した。これらの調査によってカンタータの創作活動の基盤であった三宮廷の政治的状況と宮廷内の組織を理解した。 2.一方、音楽史料に関しては、三宮廷に仕えた10人の作曲家の作品の現存状況から、1)に仕える作曲家の作品は1)のみならず2)にも所蔵され、その逆の例も多数存在することを確認した。これによって、当時は複数の宮廷でカンタータが交換、共有されていた可能住が指摘でき、今後は誰のどのような作品が、どのような機会に他宮廷へ贈られ、それにはどのような意味があったのかという考察を進めることが可能となる。
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