2004 Fiscal Year Annual Research Report
電界効果を利用したキャリヤー制御による有機物強相関電子系の研究
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03J02833
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鴻池 貴子 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノマテリアル研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有機伝導体 / 磁場誘起超伝導 / 量子振動 / 磁気トルク |
Research Abstract |
昨年度は磁性アニオンを含む有機超伝導体κ-(BETS)_2FeBr_4の低温、強磁場特性を調べ、この物質が伝導面に平行な磁場下において磁場誘起超伝導(FISC)を示すことを報告した。本年度は理論的に示唆されているFISC状態での特異な磁束状態を確認するためにマイクロキャンチレバーを用いた磁気トルク測定を行った。低磁場領域では磁気転移を反映した特異な磁化曲線が得られたが、FISCに伴う明確な異常やFISC相の内部構造を示す異常は確認できなかった。 また、FISCの系統的研究を進めるために類似物質、κ-(BETS)_2FeCl_4でのFISCの有無を調べた。この物質では前回のものに比べてアニオン分子のハロゲンのエネルギー準位が低いため、磁性FeスピンとBETS上の伝導電子の相互作用が小さく内部磁場が小さいと考えられる。そのため、外部磁場と内部磁場の相殺によって引き起こされるFISCがより低磁場で観測できると期待される。しかしながら、ゼロ磁場における超伝導転移温度が100mKと非常に低いために測定が困難であり、現在のところFISCの観測には至っていない。 さらに、磁性原子を含む無機物質、HoNi_2B_2Cにおける低温、強磁場下での電気抵抗測定を行った。この物質では、磁気オーダーに関連してリエントラント超伝導が観測されたり、超伝導臨界磁場が非常に小さいことから大きな内部磁場の存在が期待される。そこで25Tの水冷銅マグネットを用いた測定を行ったが、FISCは観測されなかった。報告されている量子振動の結果から考察すると、内部磁場が非常に高い可能性があり、FISCの観測には超強磁場が必要であると示唆される。そこで現在、磁性原子の濃度を数パーセントに希釈したサンプル作成を依頼し、内部磁場を小さくしたものについて再度FISCの有無を調べる予定である。
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Research Products
(4 results)