2003 Fiscal Year Annual Research Report
異なる環境条件下における果実の抗酸化成分の動態とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
03J02844
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
圖師 一文 熊本県立大学, 環境共生学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | トマト / 塩ストレス / 抗酸化成分 / 果色 |
Research Abstract |
本年度は,異なる環境条件下における果実の抗酸化成分の動態を明らかにするためのモデル実験系の確立ならびに塩分濃度,温度および光条件が異なる中でトマトの栽培を行った.以下に得られた結果の概要を示す. 1.トマト果実の培養条件の決定 植物の生育する環境条件を設定するとき,圃場ではさまざまな気象条件に左右されるので正確な設定が困難な場合が多い.そこで,果実の環境条件を正確に制御でき,さらに多数のサンプルを処理できるモデル実験系を構築した.トマト果実をin vitroで培養するための条件について検討し,結果として開花後7〜10日目のトマト果実を採取し4%スクロースを含むMS培地上で培養することによって,果実の生長は抑制されるが成熟は正常に進むことが明らかになった.このことから,この培養系を用いて異なる環境条件下における果実の抗酸化成分の動態をモデル実験的に明らかに出来る可能性が示された. 2.塩類濃度,温度および光条件が異なる環境におけるトマトの栽培 温度,光条件が異なる環境(春夏期,秋冬期)においてトマトを塩ストレス条件下で栽培した.塩ストレスによってトマト果実の生長は抑制され,抗酸化成分(リコペン)含量と強い相関を示す果色は変化が見られた.また,塩ストレスが果実に与える影響の春夏期と秋冬期における差異は,果実生長では見られなかったが,果色では認められた.これらは,塩ストレスによってトマト果実の抗酸化成分は影響を受けること,その影響には塩ストレスと温度・光条件との間の相互作用が存在することを示唆している.今後は塩ストレスによる抗酸化成分の変化が生じるメカニズムを抗酸化酵素の測定などを行うことで明らかにするとともに,塩ストレスと他の環境条件(温度,光)との間の相互作用を果実のin vitro培養系を用いて明らかにする.
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