2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J02871
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
黒澤 直道 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 雲南省 / 麗江県 / ナシ族 / ナシ語 / 音声言語 / 方言 / 口頭伝承 / 宗教経典 |
Research Abstract |
本研究では、雲南省麗江県での現地調査により、ナシ語におけるいくつかの方言の音形データを収集して記述し、これをコンピューター上に蓄積する作業を行った。この調査においては、現地で発音の観察をすると同時に、録音機を用いて録音を行い、さらに一部の音声についてはビデオ撮影も行った。 本研究では、ナシ語の方言を調査するにあたり、まず標準語とされている麗江県大研鎮の方言について約2500語の語彙の発音を調査し、これまでに中国の研究者によって行われたナシ語の音韻論について新たな考察を加えた。その結果、ナシ語の音韻構造においてこれまで主として二重母音とされていたものは、介母音+主母音と捉える方がより合理的であるごとが理解された。また、いくつかの音素の音声については、これまで複数の研究者間で意見の分岐が見られたが、これについても音声を確認して一定の結論を得ることができた。 大研鎮以外の方言については、麗江県内の平野部に位置する白沙郷、黄山郷、長水村、七河郷、貴峰村の五箇所について調査を行った。また、やや離れた北部の大具郷についても調査を行った。その結果、平野部のナシ語には大きな音韻的な差異はなく、その差異は音声的な差異に留まることが確認された。さらに、この音声的な差異の一部は、政治・経済的に最も漢族の影響を受けている大研鎮に向けて、漸次的に変化していることも見出され、これが漢語の影響であるという解釈をもたらした。 また、本研究の過程で必要となったナシ語に対する漢語の影響については、その全体像について別個に考察を行い、その結果を口頭で発表した(「ナシ族の言語伝承における漢語の受容について」、日本中国語学会関東支部例会、2003年7月26日、於東京外国語大学)。さらに、ナシ語と相互に影響があると考えられる周辺言語の彝語についても、先行研究における資料を活用し、その音声に関する初歩的な考察を行った。
|
Research Products
(2 results)