2003 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニティ再生運動を通した台湾原住民の生存戦略に関する文化人類学的研究
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03J02883
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
宮岡 真央子 東京外国語大学, 大学院・地域文化研究科・博士後期過程, 特別研究員DC2
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Keywords | 文化人類学 / 先住民 / 台湾原住民 / ツォウ / 生存戦略 / コミュニティ再生運動 / 社会実践 |
Research Abstract |
1.前年度までのフィールドワークで収集した資料の整理分析を行ない、映像及び音声資料の電子化作業を実施した。 2.2003年8〜9月および2004年2〜3月の夏期・春期休業を利用して台湾へ出張し、台湾原住民族ツォウの居住地において補足調査を実施した。データの翻訳作業を行なうとともに、祭祀の伝承と観光化をめぐる葛藤について、新たな資料を収集した、戦後の台湾原住民コミュニティでは、祭祀の実施に行政が大きく関与してきたが、近年は文化復興意識の高まりにより、それを自らの手で執り行おうとする動きが強まりつつある。しかし、すでに観光化した祭祀の運営経費は政府に頼らざるを得ず、大きな矛盾と葛藤を抱えている現状が明らかとなった。 3.2の出張時に、戦後台湾の統計・法規資料の収集をも行ない、国民党政府の対台湾原住民政策の特徴を調査した。 4.民族学会第35回研究大会および日本台湾学会第5回学術大会に出席し、先住民研究の方法論や動向について議論を深めた。また、国立民族学博物館および天理大学に赴き、台湾原住民の民族誌的資料を調査するとともに、日本統治期の対台湾原住民政策に関する文献資料を収集した。 5.文化人類学における植民地主義、実践概念、市民社会論に関する研究動向を調査し、本研究の方法論や理論的枠組みを検討した。 6.これらの研究成果として、綾部恒雄監修、末成道男・曽士才編『講座ファーストピープルズ-世界先住民の現在-第1巻東アジア』(明石書店、印刷中)に、「台湾原住民族ツォウの過去と未来」と題し、19世紀末以来の急激な社会変化を経た台湾原住民社会が現在抱える社会的課題やそれを克服するための生存戦略の一環として実践されつつあるコミュニティ再生運動について、概説的な文章をまとめた。
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[Publications] 綾部恒雄(監修), 末成道男, 曽士才(編): "講座ファーストピープルズ-世界先住民の現在-第1巻東アジア"明石書房(予定). 300 (2004)
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[Publications] 楊南郡(編著): "学術探検家森丑之助"風響社(予定). 280 (2004)