2003 Fiscal Year Annual Research Report
スリランカ・プランテーションのヒンドゥー祭礼と異民族間に形成される生活圏の研究
Project/Area Number |
03J03156
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 晋介 筑波大学, 歴史・人類学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | スリランカ / プランテーション / インド・タミル / 宗教 / 民族史 / 文化人類学 |
Research Abstract |
本研究は、スリランカ中央州キャンディ県のプランテーション地域に居住するインド・タミルと近隣農村居住のシンハラ人との間に形成された一つの生活圏を研究対象に、両住民の日常的実践と交琉のプロセスに着目することで進展する民族対立和平交渉というマクロ政治状況を異民族間の生活圏からのボトムアップの視線で把握していく試みの一環である。主として次の3点の把握解明が企図された。 1.両住民間の経済・政治権力・地位の三位相におけるヒエラルキー構造の析出 2.インド・タミルの宗教実践にみられる世俗的階層性平準化論理の解明 3.バクティ的単独性の素地としての日常的宗教実践の共有の例証である。 本年の研究では、上記2に関して調査地で執行されるマーリヤンマン女神祭礼の権力論的の分析を行い、それがバクティ的平等の理念を十全に表出したものであることを明証した。さらにこの儀礼形態は上記1に関わる「浄-不浄」価値観念とカースト階層秩序との際立った乖離現象を背後条件としていること、また非本質主義的なアイデンティティ・ポリティクスに係る日常の意図的/非意図的(intentiona/unintentional)諸実践の傾向性と強い親和性を持つことを考察した。 これらの成果は論文「女神の霊媒の決定:スリランカ・プランテーションにおけるヒンドゥー例祭の分析」(『史境』46号)の執筆・議論をふまえ、日本南アジア学会第16回全国大会にて「スリランカ・エステート・タミルのマーリヤンマン女神祭祀」と題して研究発表を行った。また本年の論考を通じて本研究(特に上記1,3と連関)を下支えする問題領域としての民族論的状況の設定とその解明に着手し、その予備的成果は論文「スリランカにおけるインド・タミルという『民族』-その『想像の仕方』に関する一考察」にまとめ『筑波大学地域研究』23号に発表予定である。
|
Research Products
(2 results)