2003 Fiscal Year Annual Research Report
複数の秩序パラメータが共存する材料における光学特性の研究
Project/Area Number |
03J03173
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Research Fellow |
池田 勝佳 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | キラリティー / 光学活性 / 線形・非線形光学 / 光誘起現象 / 協同効果 |
Research Abstract |
コバロキシム錯体はビタミンB12のモデル化合物として研究が行われてきているが、塩基側に不斉炭素を持ったコバロキシム錯体が不斉水素化反応の触媒として作用することでも注目を集めている。ある種のコバロキシム錯体ではこの不斉水素化反応の中間体が単離・単結晶化できるため、X線構造解析による検討が行われていたが、最近になって光励起するとアルキル基側のキラリティーが結晶構造を保ったまま反転する錯体が見出された。この興味ある物質について、本研究では光学物性の観点から検討を行っている。 光誘起キラリティー反転反応を示す(S-エトキシカルボニルエチル)(S-シクロヘキシルエチルアミン)コバロキシム錯体のメタノール溶液の詳細な吸収スペクトルとCDスペクトルの測定を行い、ピークの帰属を行った。次に、結晶相のCDスペクトルを測定したところ電荷移動に起因するピークの強度が特に大きくなることが明らかになった。これは結晶内での分子の規則的な配列がCDに対する電気4重極的な寄与を通じて効果的にCDに寄与したためであると考えられる。この電荷移動帯によるCDピークは分子のキラリティーが光励起で反転しても極性を変えないことも明らかになった。これは結晶の対称性が光誘起反転反応で変化しないことと対応する。 次にキラリティー反転反応の機構を明らかにするために、それぞれの吸収帯を選択的に励起した場合の変化の様子を観察した。従来の予想ではCo-Cボンドの開裂を開始反応であると考えており、この場合はCo-C間の電荷移動帯の励起が必要であると予想される。しかし、より長波長のd-d遷移励起で反転反応が生じることが明らかになった。今後この点についてさらに検討を加える予定である。また、CD測定よりも直接的に不斉炭素のキラリティーを選択的に観察する手法として可視-近赤外和周波発生法(vis-IR SFG>を用いた観察も試みる予定である
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