2004 Fiscal Year Annual Research Report
複数の秩序パラメータが共存する材料における光学特性の研究
Project/Area Number |
03J03173
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Research Fellow |
池田 勝佳 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 光誘起現象 / キラリティー / 協同効果 / 結晶相反応 |
Research Abstract |
コバロキシム錯体はビタミンB12のモデル化合物として研究が行われ、アルキル基の光反応性について検討が行われている。特に、アルキル基にキラリティーを導入した場合に固体結晶においても光誘起キラリティー変化反応が進行することが注目されている。この光誘起キラリティー変化は、分子設計によって様々な特性を示すことから物理・化学の両面から興味がもたれ、また生体内における酵素反応という生物学的な面からも非常に興味深いと思われる。これまで、このコバロキシム錯体系の光誘起反応の研究はX線構造解析が主に行われていたため、本研究では光学物性の観点からの検討を行っている。 (S-エトキシカルボニルエチル)(S-シクロヘキシルエチルアミン)コバロキシム錯体結晶は、従来報告されている光誘起キラリティー反応とは異なり、キラル比率S : R=50:50を超えて反転する特異な反応を示すことが知られている。この反応の経時変化を円2色性測定により観察した。その結果、Sキラリティーの比率が75%と50%のところでステップ状の挙動を示すことが明らかになった。結晶内の各分子は等価な環境にあることから、分子間に強い立体的な相互作用が関与した反応が進行している可能性が示唆された。 また、光誘起キラリティー反転という特異な反応の機構について、IR測定を用いた検討を行った。その結果、この反転系のみがキラリティーのS/Rによって大きくスペクトルが変化することが明らかになった。スペクトル変化は、結晶内の反応空間が非対称でありS/Rに対して与える環境が大きく異なることを示しており、この環境の差が、結晶内でのキラリティーの安定性の違いの原因になっていると考えられる。 今後は、結晶相反応における光誘起キラリティー変化について、協同効果と結晶構造の関連性についてさらに検討を行う予定である。
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Research Products
(1 results)