2005 Fiscal Year Annual Research Report
マングローブを有する流域における土砂・栄養塩動態に関する研究
Project/Area Number |
03J03194
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤松 良久 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | マングローブ / サンゴ礁 / 土砂輸送 / 赤土流出 / 富栄養化 |
Research Abstract |
本年度は流域から供給される土砂・栄養塩が沿岸域に輸送され、沿岸域にどのような影響を与えているかについて検討した.本研究で対象としている名蔵川流域の沿岸には名蔵湾が存在し、かつては名蔵湾には見事なサンゴ礁が存在していたが、現在では壊滅的な状況にある.一般的に、今日のサンゴ礁の激減は水温上昇による白化、オニヒトデの急増あるいは赤土の流出が主な原因であると考えられている.しかし、湾内といった半閉鎖性の領域においてはこれらの原因に加えて富栄養化がサンゴ礁の激減の要因になりえると考えられる.そこで、出水時の赤土堆積および平水時の富栄養化が湾内のサンゴ礁に与える影響について数値シミュレーションを行い、湾内のサンゴ礁の生息環境について検討した. 計算結果から出水時の赤土堆積は河口周辺に限られ、年に一度程度起こる大きな出水においても、河口周辺を除く湾内のほとんどの沿岸域でサンゴ礁の生息を脅かすほどの堆積は見られなかった.それに対して、平水時の南風卓越時の数値計算結果から、湾内の河口周辺および東から北岸にかけての沿岸域でかなり栄養塩濃度が高く、サンゴ礁にとって富栄養の状態になっている可能性があることが示された.また、(独)産業技術総合研究所によって行われた石垣島沿岸のサンゴ礁域および外洋のおける栄養塩濃度結果と比較すると、南風卓越時の名蔵湾内の栄養塩濃度は石垣島沿岸の他のサンゴ礁域よりも圧倒的に高濃度になっており、サンゴ礁の幼生の成長を妨げる付着藻類の増殖が起こっている可能性が高いと考えられる.つまり、名蔵湾では流域の土地開発による栄養塩負荷の増大にともない、湾内が富栄養価することによってサンゴ礁が激減したと考えられる。本研究結果から湾内といった閉鎖性の強い水域では赤土の流出だけでなく、河川からの栄養塩負荷についても考慮してサンゴ礁の再生を図っていく必要があることが示された.
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Research Products
(4 results)